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次に婆さんの呆けが始まった。今思えば当然だ。 
飯を食うか、部屋に篭って人形抱きながらぼーっとして、泣いて、泣き疲れたら寝て。 

ご飯だよ、って呼びに行ったら、何か食ってんの。 
何食ってんの?って聞いたら、ご飯って言う。はあ?と思いながら、 
婆さんの顔見たら、金色の糸が口から出てんだよ。 
そんで、手元には半分剥げた千寿江。 
俺はこの時が一番怖かったとおもう。 
急いで婆さんから吐き出させた。 

母親に相談しても、あんな人知らないの一点張り。 
父親に話して、病院にって言っても、仕事が忙しいから連れていけない。お前が面倒みろ、と。 
そればっかりだった。その時、俺まだ厨房。でもな、妹がしんでから、 
うちの家族、おかしくなっちゃったんだ。 
御神酒やってなかった俺のせいだと思うと…やらざるをえなかった。 
中学は不登校になってたよ。

千寿江は婆さんの手によってぼろぼろだった。 
髪は引き抜かれ、服は脱がされ、切り刻まれ。 
汚い話だが、排泄物を塗りたくられもした。 
流石に可哀想だって思って取り上げても、翌日にはちゃんと婆さんが持ってる。 
色んなとこに隠したんだ。トイレの棚、両親の寝室、あとは下駄箱とか。 
夜中、「ちずえぇ、ちずえぇ」って徘徊して見つけるらしい。 
そしてまた千寿江をボロボロにする。 
見兼ねてな…仕方ないから、試しに俺の部屋に置いとく事にしたんだ。 

夜中というか3時過ぎか。朝方、婆さんが千寿江を探す声で目が覚めた。 
俺の部屋、二階だし、まあ登って来れはしないし、呆けてから上がってきたことないし… 
と安心しながら、千寿江を閉まったクローゼットを見ると 
扉が空いていた。確かに閉めたんだ。 
だって目につくとこに置いてたら、気持ち悪いだろ。夜中見なくて済むようにって、 
クローゼットにいれたんだ。ビニールまでかけて。 
でも、そのビニールはそこらへんに落ちてんだ。

ヤバイって、でも千寿江が。もうパニックに陥った。 
布団の中で滝汗。寝たフリするか、起きて確認するか。 
兎に角怖かったんだ。 
そしたら、キィと、物音が聞こえた。ドアを開ける音。 
位置関係的には、ドア/ベッド(俺の視線→)/クローゼット 
俺は怖くて、ドアの方を見る事ができなかった。 
そしたら不意に、声が聞こえたんだ。 
「千寿江、こんなとこにおったんけ」 
婆さんが登ってきた⁉ と思って、そこで俺は跳ね起きた。 
でもそこには何もなかった。千寿江も、婆さんも。 
怖くて、そのまま寝ることにした。気のせいだったとおもうようにして。

千寿江と婆さんは、婆さんの自室で死んでたよ。翌日の朝、俺が見つけた。 
死因は窒息。婆さんの喉には千寿江の髪の毛と千切れた服、目玉が入ってて、 
婆さんの口の中には、千寿江の頭部が入ってた。そりゃ、飲み込めねえよ…。 
明るい部屋ん中、陽が沢山差し込む中、婆さんがそんな感じに死んでるわけよ。 
幸せそうな顔じゃなくてさ、いかにも苦しみましたってさ、 
目を血走らせて、失禁して、片手に千寿江の胴体を強く握って。 

婆さんの葬式は簡易的なものだった。 
火葬だった。千寿江も一緒に燃やした。 
墓に収める時にさ、墓に歴代の先祖の名前あるじゃん。 
そこには既に千寿江(本物の叔母)って書いてあって、変な感じがした。

ここから、俺の中で怖い話なんだけど、 
叔母さんの千寿江さんの死因って実は原因不明じゃなかったんだ。 
うちの婆さんが首を閉めて殺したらしい。 
理由は知らん。そういや父方の親戚付き合いがないなって思ったら、 
婆さんは絶縁されたらしい。 
これは葬式にきた親戚の話。 
何で逮捕されなかったのか聞いたら、誤魔化されたから、 
もみ消したんだろうな。 

婆さんが死んで、今年で四回忌だ。 
俺は高校に行ってない、何もしてない。 
婆さんが死んでから、ずっとやる気が出ない。 
この文書も、実は2ヶ月前から書いてやっと完成する。 
いっそこのまま死にたいとすら思うよ、疲れた。 

今まで起きたこと、全部千寿江叔母さんの呪いなら、 
この俺の状態もそうなのかもな。 
俺の一存を滅亡させるつもりなのかも知れないなって 
思うと、ちょっと笑えるよな。