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実家への里帰り、夜の山道で車を走らせていた時のこと。 
前方に明かりの長い列が見えてきた。 
近づくにつれ、大勢の人が提灯を下げて、練り歩いているのが見て取れた。 

列は道の端を歩いていたので車と接触することはなかったが、用心のために 
側を抜ける際は徐行してみた。 
列の中程に籠が担がれており、その中に花嫁衣装の女性が座っている。 

「花嫁行列か、今時珍しい。 
 ……っていうか、何でこんな夜中にこんな場所を通ってるんだ?」 

薄気味が悪く思えたので、じろじろと見るような真似はせず、 
充分遠ざかってから後ろを確認してみた。 

つい先に行列がいた道は真っ暗で、明かりなどどこにも見えなかったという。 

帰宅後にこの話を家人にしたところ、祖父からしつこくこう聞かれた。 
「花嫁は乗っていたか? いたんだな、間違いないな?」 
安堵した様子にただならぬものを感じて、一体どうしたのだと問うてみた。 

「あれは昔から目撃されてる花嫁行列でな。 
 『ミサキの嫁入り』なんて、地元じゃ呼ばれてるよ。 
 正体は誰も知らねぇ。 
 籠に花嫁が乗っている時は、何も問題なんて起こらないんだが……。 
 誰も乗っていないと、次の日、村から娘が一人消えるってんだ。 
 山の神様に嫁に獲られるって言われてたけどな」

彼はその数年後に結婚し、可愛い娘さんを授かった。 

あの言い伝えを頭から信じた訳ではないが、出来るだけ実家に娘さんを 
泊めないようにしているのだそうだ。 

「いや、信じる信じないの前に、あの行列を見ちゃってるからなぁ。 
 祖父さん祖母さんも、夜に娘は泊めん方がええ、って言ってくれたし」 
難しい顔をしながら、彼はそう言っていた。