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普段ロクに運動もしていない俺だが、旅は好きで、あちこちの場所に行っていた。 
現在でも行われていると思うんだが、当時から電力会社の専用鉄道に乗れるツアーというのをやっていて、俺は応募した。 

結果、5月頃にツアーにいけることになり、俺は大喜びで参加した。 
ツアー対象の路線は途中までは観光用のトロッコ路線となっていて、この区間は一般人でも乗れ、普段から綺麗な景色が見れるので有名。 
冬季は閉鎖していて、この日は再開して日が経っていないらしく観光客で大いに賑わっていた。 
その中でも俺を含む専用鉄道のツアー客は専用列車に乗る。なんか特別扱いされているみたいで鼻高々な俺であった。 

専用線に入るまでの区間も雄大な景色が続いており、飽きさせることは無かったのだが、いよいよ専用線に入るとなると俺の心は嫌が応にも高まった。 
その専用線だが、殆どの路線はトンネルになっている。なんでも冬季でもこの専用線は一年中動けるようにしているらしく、豪雪対策なんだとか。 
途中で客車を乗り換え、貨車ごと登れるエレベーターに乗ったりと、何もかもが通常体験出来るものでもないからと、俺はガキのように気分を高揚させていた。 

専用線に入って暫くだっただろうか。トンネル内の不気味な空気も作業員さんの説明のおかげでなんとなくやわらいでいたものだが、 
一瞬、ほんの一瞬なんだが、ぶわあっと手の平が車両の窓ガラスに音も無くはりついてきて、めちゃくちゃビビった。 
その時はそれっきりの現象で、なんかの気のせいだったということにしてすませたんだが、当然ながら俺の心の中には悪い形で残ったんだな。 

専用線は上流のダム湖の下辺りが終点で、そこからは業務用のでっかいケーブルカーとバスで、別の出入口側に出る形となった。 
だから、さっき通ったトンネルは通らない。気がかりは気がかりのまま、俺はその地点に戻ることは無かった。 

家に戻ってから、有名な寺でお祓いを受けたりしたんだが、まあ日常生活にはさしたる支障も無く、平穏なまま数か月が過ぎた。

それから、残暑が残るくらいの季節に、俺の兄貴の友人たちと、先述の場所について話していた時、兄貴が唐突に「登山でそこに行ってみよう」とか言い出した。 
なんでもその場所は登山地としても有名らしく、先述の専用線のトンネル近くにも外から行くことが出来るらしい。 

ただ行程は厳しいらしく、ワンダーフォーゲル部員だった兄貴たちと違い、軟弱な俺はどうしても行く気になれなかった。 
慣れていないわけではない。このバカ兄貴が登山に強制連行するから、登山についての基本的な知識くらいはあった。ただめんどくさい。 
あの時の件が影響していたわけではなく、単純にその場所は登山地として行くのがしんどいわけだし、また道が細くて死者が出るような場所だと聞いたからだ。 
しかしながら兄貴はフォローするから、と無理強い。結局俺も行くハメに。兄貴、こんなことばっかやってたらいつか人殺すんじゃね?とか思ってた。 

前日のうちに麓の温泉街に泊まり、当日は朝から先述の路線のうち一般トロッコ区間に乗って終点まで(専用線はこの終点から先まで続いている)。 
終点から登山が始まる形となる。夏もそろそろ終わりという時分だったが、自分たちの他にも登山客は結構いた。 

ルート通り進むとおおよそ4時間から5時間で途中にある山小屋に着く。基本的にここらを登山する場合、ここで一泊をとって、翌日に残りの行程を進み、 
折り返してもう一度小屋に一泊、そして来た道を戻って駅につき、トロッコに乗って帰るという。 

登山といっても何のことはない、ちょっと道の険しいハイキングといったルートだ。ただ崖っぷちを進むことは多く、油断したら谷底に真っ逆さまというのが怖かったが。 
途中不気味なトンネルも何度か通ったものの、特に危ないことも無く、無事小屋に到着。小屋には温泉もあり、ゆっくり翌朝までを過ごせた。 
ただなんというか、寝ている途中のゴーゴー鳴る音が気になった。ただ布団から出ることは無かったので、歩き疲れて耳鳴りでもしてるんだろうと自己解釈し、気にせず寝ることに。

翌日は2時間程度で目的地に到着。なんというか呆気ない旅の幕切れであった。実をいうとここから、専用線の終点のあるダム湖まで道は繋がっているのだが、 
ここから先は上級者向けのコースらしく、兄貴は行きたがっていたが食糧確保の問題もあり断念。ただダム湖まで行けば別の交通手段もあるにはあるらしいが・・・。 
さて、目的地周辺に専用線が一瞬トンネルから顔を出すところがあるらしいことを聞いていたが、なんと道の途中で思いっきり交差していた。踏切無いんだな、まあ1日に通る列車もたかが知れているんだろうけど。 

列車が来ないかなーと、兄貴の友人たちといたずら半分でトンネルの側を覗いてみる。 

どわーっと何かが来る感じがした。「あ、列車来そう」なんて呟いたがきそうなものは明らかに列車ではなかった。 
とにかく得体のしれない何か。しかも単体じゃなく、集団でぶわぁーっと来る感じでな。