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3年前、部屋を掃除してたら、昔の絵日記が出てきた。 
小学一年生のときに宿題でやらされてた「せいかつてちょう」ってやつ。 
ほほえましい内容の絵日記に交じって一枚、気味の悪い絵と日記があった。 
墓石と思われる四角いものの上に、子犬らしきものが乗ってる。 
しかも子犬の顔の半分は骸骨。 
絵の下には 
「こいぬをおいかけたら、こいぬがおはかのうえでしんでいました。まわりにほねがたくさんおちてました。かわいそうでした。」 
と書かれていた。

この絵日記の内容、よく覚えてる。 

その日、「身近な生き物を探そう」という宿題が出された。 
捕まえられる生き物であれば、学校でみんなで世話をして飼うというような内容だったと思う。 
お世辞にも頭の良くなかった俺は、犬が飼いたい!と思った。 
どう考えても犬を捕まえるのも、学校で犬を飼うのも無理なんだけど。 

とにかく、放課後、友人たちを誘って犬を探しに出た。 
野良犬なんて見たこともないのであてもなく住宅街をうろうろするうちに、竹林があることを思い出した。 
俺の地元は自然のまったくない住宅街。 
なのになぜか、住宅街のど真ん中に、ぽつりと取り残されたように竹林がある。 
そこなら犬がいるかもしれないと思った。 

ちょっとした冒険のつもりでそこへ近づくと、竹林の中へと続く道に、確かに子犬がいた。 
俺は子犬を追いかけて林の中へ入った。 
林の中は昼間なのに薄暗くてじめっとしていて、気味が悪かったのを覚えてる。

子犬を追いかけ林をいくらか進んだ先に開けた場所があった。 
子犬はあっさり見つった。 
ただし、死んでいたが。 

無数の墓、墓、墓。 
そして無数の地蔵。 
それらの上に、子犬の死体がのっていた。 
周りには動物の骨がいくつも散らばっていた。 
気味が悪くて、俺たちは我先にと一目散に逃げ出した。 
そしてその日に書いたのが例の絵日記だったわけ。

その絵日記を眺めながら、ふとあの林のことが気になった。 
そういえば、あの林をなくすなんて話があったなと。 
浮浪者が住み着いていて危ないからと、以前から林をなくす話が出ていた。 

なくなる前に見に行こうかな。 
軽い気持ちで自転車で走って5分。 
相変わらず住宅街の真ん中にひっそりと。その林があった。 
思い出に浸っていた俺は、うきうきと林の中に入った。

相変わらず薄暗く気味の悪い林の奥に、あの時と同じ墓と地蔵の群れ。 
墓の上には犬の死体がいくつも乗っていた。 
周囲にはやはり動物の骨。 
犬の周りには鮮やかな赤い血が散らばっていて。 

パキっ 
あまりの衝撃的な光景に一瞬呆けていたが、木の枝が折れるような音で我に返った。 
人の気配がする。 
俺はあの時と同じように一心不乱に林を駆け抜け、自転車に飛び乗ると一目散に逃げ出した。 

家に帰り着くと気が抜けて、玄関先でずるずるとへたり込んでしまった。 
いつまでも玄関から動かない俺を心配して母親がやってきた。 
「どうしたの?」 
「なんでもない・・・」 
なぜだか母親に言う気にはならなかった。 

次の日、母親から思わぬことを聞かれた。 
「ねえ、あんた怪我でもしたの?」 
「してないけど・・・」 
「ああ、そう。ならいいけど。自転車に血みたいなのがついてたから。」 
「血・・・」 

驚きと恐怖と、ごちゃごちゃの感情のまま自転車を見た。 
確かに自転車のかごにべったりと、乾いた血のようなものがついていた。

その後、呪われたとかそういうことはない。 
なにごともなく、就職と同時に俺は地元を離れた。 
例の林はつい先日、撤去されたと聞いた。 
あの墓と地蔵と、動物の死体。 
あれらはいったい何だったんだろう。誰がやったのか。そしてどうなったのか。 
誰にも聞けなくてもやもやしてる。