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わたしが大学の時に、群馬県の方に旅客機が墜落しました。 

季節は巡り、悪友とツーリングに行こうという事になりコース関係上、墜落した付近の峠を走らねばなりませんでした。 

悪友はいっさい、心霊や妖怪といったものは信じない人なので、

「毎年、供養のために花とか関係者が上げているじゃ ないか。出るわけないよ!」
と、平気な顔をして言います。 

わたしは彼に、
「みんな(身体の部分)見つかっているわけじゃないだろ……あぶないって」 
と、言ったのですが、聞くわけがありません。 

だって、コースを変更すると、目的地へは4時間は余分にかかるのですから……。 

しぶしぶ、そのコースを取ることとなりました。 

果たして、問題の峠の入り口に着きました。路肩にバイクを止め、一休みしていると、悪友はわたしを尻目に、 「ひとっ走りしてくるわ」と言ってコースに入って行きました。 

しかし、10分もしないうちに戻ってきます。戻ってきた友人に、

「早かったな。何かあったのか?」 

と聞くと、友人は何をあせっているのか、バイクのサイドスタンドさえ立てるのもおぼつきません。 

平静を装おうとしますが、震える彼の手がすべてを物語っています。 

ようやく、ヘルメットを外した彼の顔は、蒼白状態でした。

「出た……。出たんだよ……」 

「何言ってんだよ。いつもの担ぎだろう。お前に見えるわけないだろ……」 

と言って、わたしはバイクのエンジンをかけようとしました。しかし、なかなかかかりません。 

「あれっ、おかしいな……さっきガソリンを入れたのにな」 

「やっぱり……、冷やかしに来た俺たちに来るなといってるんだ……」 

「冷やかしに来たのは、お前だろ……」再度キックするとエンジンはかかりました。 

「じゃ、ひとっ走りして見てくるわ」走り出して、7~8分位すると、なにやら山の雰囲気が違います。
 
いつもの生き生きした躍動感なく、時間が止まっている感じです。 

「まずいな……やっぱり近くにいるぞ……」つぎのコーナーを曲がった時、それは的中しました。 

肩のもげている者、足がへし折れている者、頭が潰れている者、全身ただれている者……。 

上げたら切りが無い程の人たちが、ボロボロの状態で列を成し、奥へ奥へと歩いています。 

「うわ…、これはまずい……、気付かれないうちに戻ろう」出来るだけ静かにバイクを停止し、Uターンをしました。 

いや…気付かれてはいるのでしょうが、こちらへは近付こうという気配はありませんでした。 

戻ると友人が心配そうに待ってました。 

「な……」 

「うん……」 

わたしたちのやっと出来た会話はこれだけでした。言葉少なく、わたしたちはコースを変えました。 

それ以来、この夏の時期はそこを通ることはしませんが、今も出るんでしょうか……。 
自分の身体を求めて……。