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やっと自転車の補助輪が外れたぐらいの歳に近所の2つ上のAに誘われて 
近所の山に遊びに行った時の話。 


その山はフリークライミングの練習場になっているような山で、今で考えると結構危ない所だったんだけど、 
当時の少年ジャンプのド根性路線に影響されて、崖の落石防止のためにかけられていたフェンスを直進行軍ばりに登ったり、 
蔦ぶら下がって移動してみたりと、日常的に危険な遊びをしていたので自分らにとっては普通のことだった。 

で、その帰り道、普段なら迷わない道なのに先頭を歩いていたAが道を間違えて何度も家とは反対側のP市側に山を下りてしまう。 
やっと間違えた分かれ道が分かり元のルートに戻った頃には、もうすっかり暗くなっていて、目の前を歩くAが草木を掻き分けて進む音を頼りに 
歩くしかなかった。 
そうこうしているうちに、前を歩くAとは別に真後ろからも草木を掻き分けて進んでくる音が。しかも明らかにAや自分よりも早い勢いで音が迫ってくる。 
しかも良く聞くと音源は複数で何かが自分たちを追いかけてきているのは間違いなかった。

「お前これあの時の犬なんじゃないか?」とAに問う。「なんで鎖つけてないんだよ!」と返事にもならない事を言ってきた。 
実はAは行きの時に獣道にポツンと1軒だけ建っている家の庭先にいた犬に枝を投げたり、近づいて行って餌桶を山に放り投げたりしてからかっていた。 
自分は犬好きだったし、嫌な事をするなぁと思って加わらなかった。が、こうやってその後を追われている。とその時初めて後ろから追いかけてくる音は 
「ワンワワン!」と唸り声をあげてきたので、犬には間違いなかった。

「やっぱり犬じゃんか!お前のせいだぞ!!」とAに文句を言い終わるや否やつま先を木の根に引っかけてもんどりうって転んだ。近づく犬が草木を掻き分ける音。 
遠ざかるAの足音―。 
後ろを振り返ると草木の間から漏れ出た月明かりに照らされて、黒い大きな犬が唸り声をあげながら近づいてくる。すると低い唸り声をあげながら一瞥すると、 
自分がからかったAではないことがわかったからなのか、元来た道を戻っていく。

とにかく離れてくれたので助かったと一人帰り道を進んでいった。そして獣道に通じる近所の街灯のあるアスファルトの所まで出ると、 
Aが申し訳なさそうに立っていた。「おまえがからかった、あの時の大きな黒い犬だったぞ!」と文句を言うと 
「え、あの時白い犬しかいなかったぞ?」とA。 
この期に及んで言い逃れするのかと更に怒りを覚えた自分は「白い犬2頭の他に犬小屋の横に黒いのも1頭いたろ!」と怒鳴り返す。 
とAは「お前…あの時も2頭しかいなかったぞ。暗いから見間違えたんじゃないか?」と少し引いた感じ反論した。

「でも3頭いたって!」と言うと、更に引いた感じで「だから2頭だってば。」 
結局その後、お互いに何に追っかけられていたか結論を言い出せないまま。家に帰った。 

後日、古くから住む近所のスーパーのおばあちゃんにその話をすると、 
「あの家は昔っから犬かっとったからねぇ。あれは泥棒避けなんよ。だから暗い時にいったらいかんよ。」と 
諭された。

「それは分かったけど(身をもって)、今黒い犬飼ってるよね?」と尋ね直すと 
「だから昔っからかっとるんよ。何代も前には黒い子もおったさ。」と複雑な顔しながら答えた。