MZ18063DSCF4751_TP_V

親から聴いた話。親が新婚の頃だから30~40年前の事だと思います。 
東北のとある観光地に行った両親は、下に川が流れる景色の良い温泉宿に泊まったそうです。
ただ、景色が良いと言っても宿に着いたのは夜7時過ぎ。川側の部屋を予約していたので、翌日の景色をとても楽しみにしていました。 

しかし、チェックインを済ませようとフロントで手続きしていると、どうも係の人の態度がおかしい。顔は笑顔なのだけど、どこか怯えているような様子で「昨日の雨で少し増水していて、夜はうるさいかもしれません」と部屋を替える提案をしてきました。 
歯切れ悪く伝える従業員の方に当時両親は「変だな」とは思いつつ、「気にしませんから」と部屋を替えずに案内してもらったそうです。

何はともあれ、せっかくの旅行だからと深くは気にせず、母はお夕食の後、お風呂に向かったそうですが、しかし、やは何か変なのです。 
「(私たち以外に10台近く他県の車が停まっていたのに、誰1人として遭わない)」 
廊下でもお風呂でも。お客さんだけでなく、従業員すら館内ですれ違わなかったそうです。 
さすがに少し気味が悪いと思いつつも、湯船に浸かった時でした。 

キャハハ・・・ 

突然、女の子の笑い声のようなものが大浴場内に響いたのです。 
さっきまで人の気配すらなかったのに、他のお客さんかな?と思って振り返ってみますが誰もいません。 
母は気味が悪くなり、急いで上がり、部屋に帰ったそうです。 
父は「酔っているんじゃないか?」と笑い、その場は納まりましたが今思えばこれが全ての始まりでした。

次に父がお風呂に向かいました。 
やはり人っ子一人遭わない。それどころか、お風呂ではいきなり積んであった桶が崩れたり、浴場のランプが切れたり。 
父は偶然と自分に言い聞かせたものの、母のこともあるので、急いで部屋に戻ったそうです。 

さすがに気味が悪すぎる。 
「明日、陽が昇ったらすぐにチェックアウトしよう」 
父と母はそう話合い、何かあったらと思い部屋の電気をつけたままで床につきました。 
ところがしばらくして急に電気が消え、パキッとかバンッとかキィキィとか色んな音が部屋中に響きました。 
その内、嘘のような話なのですが、まるで地震が起きているかの如く部屋の備品が揺れ始めたのです。 
地震か?とも思ったそうなのですが、自分たちには体感がなく、館内も慌てる様子もなく・・・。 
完全に恐れおののいてしまって呆然としたそうなのですが、逆にテンプレ通りとも言えるポルターガイスト現象にどこか可笑しくもなり、急いで着替えて荷物を詰め込みフロントに駆け込んだそうです。

フロントの人に今までの出来事を伝えた所、やはりかといった暗い顔になり、奥からさらに暗い様子の女将らしき人物(この時初めてみた)を呼んできました。 
女将は、御代は結構、近くのモーテル(ラブホテル?)なら今の時間でも空いていると伝えて引っ込んで行ったそうです。 

その態度に少し憤慨しながらも、駐車場にでたときでした。数時間前まで停まっていた他の客の車が1台もないのです。みんな同じ目に遭ったかどうかはわかりませんが、紹介されたモーテルには先の旅館に停まっていたナンバーを数台見かけたので、恐らくはそうなのでしょう。 

数年後、両親は別に宿を取って同じ観光地に行きました。今度は知人の紹介で取った宿だったので、何もなかったそうなのですが、ふとあの旅館が気になって向かったそうです。 

もちろん、あの旅館は廃業されていました。 
建物は壊され、そこには川だけが流れていましたが、母はその川のほとりに花が供えてあったのを見つけ、泊まっていた旅館の人にそれとなく聞いてみたそうです。 
そこの女将曰わく、その川では昔から多数件の自殺があったらしく、かの旅館は出ることで有名だったそうです。 

母も父も、まるで創作のような陳腐な恐怖体験だと笑っていますが、同時に最も恐ろしい体験だったと。