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俺にはCという仲がいい友達が一人いて、そいつとは所謂悪友という間柄だった。 
俺もCも怖いもの好きで、他にも色々ウマが合っていた。 

そんなある日のこと、俺たちは未提出の課題を終わらせるため、夜遅くまで学校に居残るハメになった。 
課題も九割方終わったとき、Cは俺に肝試しをしないかと言ってきた。 
こちらとしても退屈だったし、夜の学校なんてそう来れるものでもないから、せっかくだからやることにした。 

場所は今は使われなくなった地下一階の家庭科室。別に何が出るという噂もないが、ただ不気味だということでそこを選んだ。 
実は家庭科室には宿直室が繋がっており、そこも今は使われていない。そこを回ってこようということだった。

地下一階とはいってもうちの学校は地下にも窓があった。家庭科室への扉は鍵がかかっていたため、中庭を通って、宿直室の壊れた窓から入った。 
あくまで暇つぶしなので、二人一緒に回ってこようということになった。けしてビビっていたわけではない。 

宿直室は、かなり荒れていた。押し入れのふすまは外れて床に倒れていて、埃っぽかった。畳もかなり傷んでいた。 
洗面台の蛇口をひねっても赤錆の混じった水が出てきて、雰囲気が出てきたなと、Cとはしゃいだ。 

Cの携帯のビデオをつけ、二人で部屋の中を撮影したあと、宿直室を出る。するとすぐ右に、また部屋があった。 
扉を開けても暗くてよく見えなかったが、手探りでスイッチを探して明かりをつけた。 
幸い蛍光灯は生きているようで、電気は少しチカチカしたがちゃんと点いた。 

そこにはソファーがあって、それはもうダメになっていたが、その上に奇妙なものを見つけた。 
江戸時代に使われていたような硬貨が三十枚ほどあり、それが紐に通されているものだった。 
どうしてこんなとこにこんなものが? 
俺たちは少し気味が悪くなって、それは見なかったことにした。

そのまま家庭科室に入ったわけだが、案の定家庭科室も暗かった。 
まあこれはこれで雰囲気が出るからこのまま撮影しようということになったんだけど、 
流石に奥まで行くのは怖くて、携帯で部屋を見回す程度にしたんだ。 

すると、いきなり携帯の画面がガタガタ揺れだした。まるで地震が起きた時の様子を撮影しているように。 
しかも、画面の中央には白くぼやけた何かが浮いていたのだ。 
もちろん実際にそんなものがあるわけがなく、俺たちはその場で固まっていた。 
白くぼやけた物は少しずつだが大きくなっていった。そして白い物が俺たちに近づいてきていると直感的にわかった瞬間、 
Cの「逃げろ!」という声をきっかけに、俺たちは宿直室の窓から飛び出した。

教室に戻って、「なんだったんだ…」となどと話していると、Cは申し訳なさそうにポケットから何かを取り出した。 
それはさっきの、紐が通された硬貨だった。 
俺はCに「なに持ってきてるんだよ!アホか!」と怒ったが、持ってきてしまったのは仕方がない。 
そこでとりあえず、さっき撮影した映像を見ることにした。 

宿直室も、硬貨を映した時も特に問題なかったが、俺たちにとってやはり気になったのは家庭科室の映像だった。 
撮影している時はそう見えなかったが、よく見ると白いものは徐々に人間の形になってゆくように見えた。 
そしてもう人型になろうという時に、Cの「逃げろ!」という声が聞こえ、映像は終わっていた。 

俺たちは怖くなって、さっさと課題を提出し、帰ることにした。 
先生に宿直室の事を聞こうと思ったが、怒られそうなのでやめた。 
硬貨はCのオヤジに見てもらうことにし、俺たちは帰った。 
(まあ実際は寺の坊主に心霊的なものはお門違いだったようで、実際に見てもらったのはCのオヤジの知り合いだったんだが)

後日Cに硬貨について聞かせてもらった。結論から言うと、真っ黒だった。 
驚いたのは、硬貨に霊的な物が取り付いているのではなく、「執着心」が取り付いていたという。 
硬貨の持ち主が金の亡者だったのか、それに対しての執着心がべっとりと付いていたらしい。 

映像に映った白いものは、Cに金を持っていかれると思い、現れたそうだ。 
それは幽霊ではなく、執着心が塊になって映ったものだったらしい。 
人間の姿に近づいているように見えたのは、執着心の主の生前の頃の姿に戻ろうとしていたからだとか。 

硬貨はちゃんと供養したらしい。映像も消した。その後、もう宿直室には近付いていない。