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真夜中にバイクで峠道を走っていたところ、道に迷ってしまった。 
避難所に一旦停車してから「さぁどうしようか」と悩んでいた。 

すると、後ろから乗用車が一台登ってくる。 
ハイビームだったので乗っている人はよく見えなかったが、 
ナンバープレートからすると地元の人らしい。 

どこか大きな道にでも出れば、何とか自力で帰れるだろう。 
これ幸いと、バイクに飛び乗り後ろからついていくことにした。 

追い付いてしばらく後をつけていたが、突然乗用車は道を曲がると、 
舗装もされていない細い山道に突っ込んでいく。 
「裏道でもあるのかな」などと考えながら、ついて曲がってみたところ、 
その道は十メートルも行かずに行き止まりとなっていた。 

道の終わりから森になっていて、どこにも抜ける先など無い。 
乗用車は魔法にでも掛かったかのように、綺麗さっぱり消え失せていた。 

「その時になって、やっと気が付いたんだ。 
 あの車、全然エンジン音や走行音を立ててなかったって」 
慌てて峠道に戻ると、ガムシャラに走り出した。 
とにかくそこから離れたかったのだという。 
どこをどう走ったのかまったく憶えていないが、何とか帰ってこられた。 

「今思えば時期も悪かったよ。あの日は御盆だったからなぁ。 
 あれ以来、夜にそこの峠は走らなくなったよ」 
そう言って彼は苦笑していた。