NISshimonada01_TP_V

私はJRのとある路線に乗って通勤しています。
不動産関係の仕事ゆえ、出社時間が少しだけ遅くて満員を避けられることが救いでしたが、
毎朝同じ時間に起き、同じ時間の電車に乗り、同じ時間に出社しているのが何だか退屈で、
人なのか家畜なのかよくわからない日々を過ごしていました。

そんな中でも、少しでも楽になろうと、
電車の連結部分近くの一番端で吊り革につかまり、
何も考えずに窓の外を眺めることが癒しとなっていました。

見慣れた景色に違和感を感じたのは、冬の寒さが少し和らぎ始めた頃です。
「し・・・じゅう・・・きゅう・・・」
電車が走る音以外は人の息遣いくらいしか聞こえない車内で、
何か音を発するのを耳にしました。
何だろうと集中しましたが、それ以上何も聞こえることはありません。
空耳かなと思い、そのまま会社に向かいました。

が、それからというもの、妙な音は毎朝続きました。
「し・・・じゅう・・・に・・・」
「さん・・・じゅう・・・さん・・・」
どうも、その音、というよりも声は
何かの数字を発しているようなのです。
42、41、40・・・33、32、31・・・と。

そして気付きました。
快速列車で通過するとある駅の先頭から、その声は発せられているのだと。
声の主も姿も見えません。
そして、その声はどうも私しか聞こえていないようでした。

「じゅう・・・ろく・・・」
「じゅう・・・ご・・・」
「じゅう・・・よん・・・」
だんだん私は怖くなってきました。
この数字が読み上げられなくなったとき、いったいどうなるのだろうと。
休みの間に読み上げが終わればと思ったのですが、ダメでした。
出社しない曜日はカウントがストップし、
私が電車に乗っているときだけカウントされるようなのです。
仮病で休んでも同じです。


「ご・・・」
「よん・・・」
その週の私はとんでもないくらい土気色した顔をしていたそうです。
よくわからない数字の読み上げに悩まされ、仕事の疲れや日々のやるせなさが重なり、
今にも電車に飛び込んでやろうという気さえしていました。
案外、人が自分の命を絶つときはこんなもんなんだと、ある種の達観した思いさえありました。


「さん・・・」
「に・・・」
「いち・・・」
やめてくれ!!!!!!
思わず私は電車の中で叫んでいました。
けれどもどうすることもできませんでした。

そして。その日。
カウントが最後の数字を読み上げる日。
私は快速で通過する駅前でとんでもないものを見ました。

黒く覆われた霧。それも黒より暗い黒。
その黒い何かが、私はおろか、列車全体を包み込むのです。
「おおおおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ」
何かが反響する音が列車中を鳴り響きました。
それは、その駅を通りすぎても止むことはありません。
私は気持ち悪くなって、次の駅で下車しました。
「何でこんな電車に・・・!!」ともめている乗客と老婆がいたのを尻目に
私はトイレに駆け込み、吐き続けました。
もう会社には行けない。
その場で携帯電話を取り出し、会社に電話しようと思った矢先です。


「おい!!お前!!!大丈夫か!!!!!!」
逆に、会社から鳴り響いた電話の第一声は、それでした。
何のことか分からない私は、その詳細を聞いて血の気がひきました。

そして。その日。
カウントが最後の数字を読み上げる日。
私は快速で通過する駅前でとんでもないものを見ました。

黒く覆われた霧。それも黒より暗い黒。
その黒い何かが、私はおろか、列車全体を包み込むのです。
「おおおおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ」
何かが反響する音が列車中を鳴り響きました。
それは、その駅を通りすぎても止むことはありません。
私は気持ち悪くなって、次の駅で下車しました。
「何でこんな電車に・・・!!」ともめている乗客と老婆がいたのを尻目に
私はトイレに駆け込み、吐き続けました。
もう会社には行けない。
その場で携帯電話を取り出し、会社に電話しようと思った矢先です。


私の乗っていた電車は脱線したそうです。