ZubottyDSC_1700_TP_V

これは自分でもよくわからない話で「玄○川流れ事故」の翌年、もう秋だったが、親友と玄○川に行ってきた。
川原に下りるにはゲートがあって、「立ち入り禁止」になっていたが、すり抜けて入った。
水量は少なく秋の澄んだ水で、俺は無性に向こう岸に渡りたくなった。

地形は手前にひざの半分くらいの深さ流れがあり、そのむこうは平らな川原、その向こうにまた
浅い流れがあってそこを渡るとガケになっていた。
俺は率先して川を渡り、親友も付いてきたが浮かない顔をしていた。
うらうらと日は照り、水はきれいで人っ子一人いない。
おれはオヤツに持ってきたサンドイッチとコーヒーをとりだして親友にもすすめたが、なぜか
「いらない。よく飲んだり食ったりできるな」と機嫌が悪かった。
俺一人、上機嫌でガケの岩に座り、水の流れを見ていたが、親友は「座るのもいやだ」といって
立ったままでいた。

すると、サンドイッチに眠剤でも入っていたのかと思うくらい、無性に眠くなってきた。
眠くて眠くて、座っている岩の上からズリズリと水の中にずり落ちそうになる。
そうしているうちに、あまりに平安な気持ちのゆえか、「ああ、このまま身を投げて、水の間に間に
流れて行ったら、どんなにいいだろう」と、妙なことを考えていた。
突然、親友が「帰るぞ。頭が痛い。痛くてたまらない」と言いながら、ザバザバ戻り始めた。
それでおれは正気に戻った。

「大丈夫か?日向にいたからな」と気遣いながら、おれも元の岸に戻り、向こう岸を振り向いてみている
親友の顔を覗き込んだ。
そして、仰天した。


泣いている。ボロボロ涙をこぼして…。


ハッキリ言って親友は屈強なランボーみたいな男で、アウトドアやサバイバルも得意、120キロの
冷蔵庫だって運んだことがある。
「そんなに頭イタイの?」おれはちょっと狼狽して聞いたが、親友は「いや、なぜか涙が出るだけだ。
無性に悲しいだけだ」と言っただけだった。
「とにかく帰ろう」おれは戻ろうとして、そのとき、親友の真後ろに枯れ果てた古い花束があるのを見た。
「現場?」おれは親友にはそれを黙ったまま帰り後で調べてみると、地形といい、砂防ダムとの距離といい、
まさに現場だった。

親友からも電話があった。
彼も調べたらしく、結果は一致していた。
だが、親友は「川村」といい、その昔、玄倉川一帯を所領していた一族の末裔なので、彼が泣いたのはそのDNAがなせる技だったかもしれない。