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6月の梅雨の晴れ間だったと思う。
日曜の午後で、久しぶりの天気なのでブラッと高尾山に登った。

でも、思い立ったのが午後だったので、途中で日が暮れだした。
あわてて引き返したんだが、薄暗くなってくる杉林の登山道に人っ子一人いない。
日のあるころはあんなにいたのに、みんなさっさと帰っちまって、俺だけが山の中に取り残された感じ。

やっぱり不安で足取りは自然に速くなる。
いくつかの角を曲がったとき、突然、いた!
同じように山を下る若そうな男が一人。
一瞬、ホッとしたんだが、妙に違和感がある。
男の服装だった。
きちんとスーツを着込み、黒かばんを手に、ビジネス街から抜け出たようなお仕事スタイル。

再び、黒雲のように不安と疑問がわいてくる。
だが、都心に近い高尾山だ。
フラッとやってくるリーマンがいたって不思議はない。

現に自分だって、フラリとやって来たのではないか。
そう思って、俺は彼を追い越しにかかった。
リーマンの足取りはいたってフツー、急ぐ様子もない。
一方、俺は急いでいる、狭い登山道で距離はみるみる縮まった。

ぶしつけだが追い越すとき、俺はグルリと振り向いてみた。

俺だった!!!

俺、俺、俺、間違いなく俺だ!

背格好といい、着ているダークスーツの趣味といい、黒を基調のネクタイといい、まさに俺。
その「俺」は、俺が傍らにいないが如く、フツーにうつむき加減に下山していた。
その顔も鏡で見るように、俺だった。

一説に「ドッペルゲンガーを見ると死ぬ」といわれているが、それはないな。
現に俺はぴんぴんしてるw