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高校2年時の話。自分、絵の塾に通っててそこでいろいろデッサンしてた。
基本モチーフは自分で買いに行くんだけど、寒い冬なのに百合の花をかくっていう課題があった。

近くの花屋さんで、一つの茎に5つくらい蕾がついてるのを1000円で買った。
そのときまで花を買った事なんて無かったし、かなりうきうきしてた。

咲くまで4日くらいかかっちゃって、毎日、未だ咲かないのかなぁって心待ちにして、
蕾をつんつん触ってた。そこそこ白い花が咲いて 先生に描いて良いって言われた時はかなり嬉しかった。

たぶん10時間くらいにわたって描いた。

すっごく楽しくって、ユリギャーヌ黒船2号とか名前つけて(たぶんこんな感じだった)、心の中で名前呟きながら描いてた。

描き終わったら自分の家に持って帰るんだけど、花好きの母親が「うわ、百合の匂いくせえ!」っていって自分の部屋に飾ろうと思ってたのに、てきとうな花瓶に入れて寒い玄関に置いてしまった。
自分的には描いてる時ずーっと匂い出た香りだから臭くもなんともなくて、かーちゃんひどいなあとか当時思った。

百合の花のめしべ?の粉って服とかにつくと取れないのね。だから母親が花の中心から伸びてためしべとかおしべとか全部切り取ってた。

それに気づいたのは家に持って帰ってきてから2,3日たった後で、葉脈や粉の一つ一つ愛して描いてたのに、これまたひどいなあって思った。
で、結局母親はにおいがきついからって、満開の百合を捨てちゃったらしい。

それから正月はさんで、冬休み終わりかけの頃だったと思う。

宿題に追われて、深夜までずっと勉強してた。ふと、2時くらいになんか飲みたいなぁって思ってたら、乾いたのど元から変な匂いがむわっときた気がした。
なんとなしにその匂いを鼻の奥の方で感じてたら、知ってる匂いだった。百合の匂いだったんだ。

花好きのかーちゃんも、百合は嫌いだったみたいだから買わないし、前自分が買った百合ももう捨てられたはず。

だけど絶対、百合の匂いだった。たまたま食べたものがまざってそんな匂いになったんだろうって、気にもとめずに寝た。
で、朝起きたら枕の端に黄色い粉がついてた。百合のめしべ?の花粉。
おかしいなあなんて思いながら、数日経った。また深夜、百合の匂いがした。

今度は身体の中からじゃなくて、まえ百合が置いてあった玄関から。百合の匂いって強烈なのね、
匂いだ人分かると思うけど。満開の時はとくに、樹液みたいな、
すっっごく甘ったるい匂いがする。似た匂いなんかない。

香水やお香でもあんなにおいはしない。

夜だからより怖かったのもあると思うけど、一階降りてみて玄関に近づいたらもっと匂いがきつくなった。
喉に張り付くような、甘さがつーんと花に突き刺さるくらいの匂い。

真っ暗で物音しない空間で、五感の中の嗅覚だけが異常に働いてた。

とりあえず電気つけようって、廊下の電気つけた瞬間に匂いが消えた。
嘘だと思うくらいに。

でも鼻にはまだあの匂いが残ってて、気持ち悪くて冷蔵庫にあったハーゲンダッツで味覚を誤魔化した。

何日かしても服に百合の粉みたいなのがついてたり、鼻にずっとあの匂いがこびりついてて、すごくいやだった。それが何年か続いてる。今も。気のせいかもしれないけど、なんか慣れてきてしまった。
ただあの冷たい実家の玄関で、暗闇の中、満開に咲いてた真っ白な百合のことを思うと、少し怖い