YUKISDIM2014_TP_V

私は子どもの頃から奈良県大和高田市に住んでいます。
私も、私の子どもと同じU西小に通っていました。

私が通っていた頃、U西小の体育館の横にボットン便所がありました。
木造のオンボロ便所で、幽霊が出ると噂されてました。
6年生のとき、友達と一緒に幽霊が出るかどうか見に行ったことがあります。
時間帯は、たしか放課後すぐでした。

まだまだ昼間だったし、便所内は電灯が点くから全然暗くありませんでした。
私たちはそのせいで油断していました。
あるとき、何の前触れもなく壁の木目が勝手に動きました。
動いていたのは2秒か3秒ぐらいの、ほんの一瞬でした。
私たちはしばらく、それに対して無反応でした。

私はそのとき、木目が動いたのを認めたくなくて、引き続きそのへんを見回すフリしてました。
でもすぐ友達と、どちらからともなく顔を見合わせました。
そして友達の方が先に頷きました。
どうやら友達も私と同じ状況だったようです。
私たちは「キャーーーッ!!!!」と叫んで走り去りました。

次の日の20分休みに、私たちは5人か6人でボットン便所を見に行きました。
私たちの世代ではまだ、ボットン便所を探検や使用しに行ったことのある子がけっこう居たのです。
木目が動いていたあたりを皆で見たところ、その部分だけ以前と明らかに違う模様へ替わっていました。
曲線と、色の濃淡だけで肖像画を書いたように替わっていました。
ある一人が、しばらくキョトンとしてから「ひっ」と息を飲みました。
それがキッカケになり、私たちはまた走ってボットン便所を後にすることとなりました。
ボットン便所は電気が点いたままとなり、私たちは後から先生に怒られました。
でも当時は、「勝手に消えたりするよりマシだ」と思ったものです。

私の子どもがU西小に入学する頃は、もうボットン便所が取り壊されていました。
怖がらせてはいけないと思い、木目の件は一切話していません。
そして、来月には末の子がU西小を卒業します。
私もようやく、木目の思い出から―――――
少なくとも、いつの日か孫が生まれてまた私たちのように育つまでは――解放されます。