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北関東の某県を走る国道6号線から少しわき道に行くと、
やたらと高低差が激しく、沿線には民家がぽつぽつと見えるくらいで
ほかに何もないような、高い木々に挟まれた林道に出る。

某市内の自宅に帰るため、この林道にて車を走らせていた日曜日の夜の出来事。
時刻は夜11時ごろ。友人と会う用事を済ませ、眠い目をこすり、
明日の仕事のことなんかをぼんやりと考えながら、林道を運転していた。

前方には若者が二人乗っていると思われる、大きめの黒いワゴン車が
一台走っている。この林道は夜になると真っ暗になり、
車のライトが照らすより向こうに何も見えない道路の起伏が、
ようやく頭に入ってきた最近になるまで、とても不安に感じながら走っていた。

道の中で一番大きな起伏の下り坂に差し掛かったころ、
ふいに前方のワゴン車が何かを大きくよけるように右にハンドルを切り、
そして再び元の左車線に戻った。後続の私としては、
いったい何をよけたのかと急な出来事に驚き、
ライトに照らされる道路上に目を凝らした。前方のワゴン車のよけ方の、
あまりに急激さに、もしかしたら人でも立っていたのかと思ったが、
道路の上には、このあたりによく見かける猫の轢死体すらない。

私は、少しばかり不思議に思いながら、特に気にもせず、
そのまままっすぐ通行中の左車線を通過した。
 すると、前方のワゴン車の助手席に乗っている若者が窓から頭をだし、
こちらを振り返った。若者はこのあたりではよく見かけるような
ヤンチャな見た目らしく、茶色に染め上げた長髪が、
私の車のライトにはっきりと映し出されていた。
茶髪の若者は数秒の間、こちらの方へ振り返った後、首を傾げ、
頭を車内へとひっこめた。彼はなにやら、運転席の方の若者に
何かを話しかけている。しかし、少しだけ会話を交わすと、
再び何事もなかったかのように何の動きも見せなくなり、
二人の若者を乗せたワゴン車は、林道をそのまま走り続けていた。

それから数十秒後、500m程度走り出すと、
再び助手席の若者が窓から顔をこちらを振り向けた。
助手席の若者は、運転手に若者に話かけ、そのあと何かを確かめるように、
後続の私のほうを見る、といった動きを大体5回程度繰り返した。

やがて林道を超え、人通りの多い、明るい道路に出た。
右手にはファミリーマートが見え、前方のワゴン車はその駐車場に入っていった。
私は彼らとどうしても話したくなり、同じ駐車場の隣の駐車ますに車を止めた。
ワゴン車の車内をのぞき込むと、運転席の若者が、
青ざめた顔でこちらを見ていた。右の耳にピアスを開け、
眉をそり、やはり少しヤンチャな風体の若者だったが、
普段は強面であるだろう彼の雰囲気を、その時は少しも感じないほどに、
その顔は青ざめていた。

「さっきは何度もじろじろみちゃってすいませんっした。」
車のドアを開けて出てきた茶髪の若者が言った。
「いや別にいいんですけど、さっき急に何かよけてましたよね?
あれどうしたんですか?」
私が聞くと、運転席の若者が、窓越しに答えた。
「....いや実は俺、霊感とか結構あるほうなんすよ。」
彼はこう切り出し、いったい先ほどから何を感じていたのか、
話してくれた。どうやら、あの道路には若い女性の霊がいたらしく、
女性の姿が急に見えた彼はそれに驚き、ハンドルを慌てて切ってしまったそうだ。

そのあとに彼は私にこう聞いてきた。
「車ん中でなんかおかしいこと、なかったっすか?」
私が特に何もなかったと答えると、
彼はこう答えた。「いつもなら幽霊見かけても、
あ、幽霊いたなーくらいですぐ終わるんすけど、あの時は、
どーもうしろにずーっとその気配がしてた。
気持ち悪い冷たい感じがずーっと続いてたんです。
今はなんも感じないんすけど、もしかしたら、
あんたの車についてたんじゃないかって思って。」
彼らはもう出発する所だったらしく、この話を私に伝えた後、
私に軽く会釈をし、コンビニを後にした。私も自宅に帰ろうと、
運転席に乗り、残り数kmの道のりを走っていた。

ふと気が付くと車内が先ほどより、だいぶ暖かいことに気付いた。
そして暖かいだけではなく、何とも言えない違和感があった。
誤って暖房でも入れてしまったのかと思い、確認したが、そんなことはない。
私は冷房のスイッチを入れ、少しばかりの冷気を体に浴びた。
その時、違和感がやっととけた。車内は先ほどより
暖かくなっていたわけではない。
そうではなくてさっきまでの車内が、まるで真冬のように、
異常に冷たかっただけだった。
なぜ、走行中にそれに気づかなかったのか、

急にハンドルを切ったワゴン車に対しての驚きで、感覚がマヒしていたのか。
それとも何度も振り返る茶髪の若者に気を取られすぎていたのか、
その原因は分からないが、人通りの多い道路に出るまで、
車内はまるで冷蔵庫のように冷たかった。それに気づいてから、
また別の意味でぞっとし、震えながらもようやく自宅のアパートについた。 
自分の部屋にて先ほどの林道についてインターネットで調べると、
数年前、その場所は交通事故で20代の女性が亡くなっていた場所だった。
次の休みにはその場所へ行きお花でも添えてあげようかと思う。ちょっと怖いけど。