KMKC428D374_TP_V

悪寒は俺が大学に行き始めた頃からもう20年以上、山登りに凝っている。
冬の日本アルプスなんかに平気で登ってしまうくらい本格的で、いつも家族を心配させている。

そんな悪寒が数年前、「変な写真が撮れたから解析してくれ」と言う。
俺は放送の仕事はしているが写真のプロではない。

まあどんなものかと見てみると、それはその年の夏に中部地方の有名な高山の山小屋で撮られた写真(フィルム撮影)。
悪寒が入ってる地元の山岳会の皆が山小屋に着いたのか出発するのか、小屋の前の広場で何人かが集まっている様子を写したもの。
中央に悪寒が横を向いて写っているのだが、その腰に、デカい風船がくっついてるんだ。
それも、子供が遊ぶようなちゃちいのじゃなく、いわゆるバルーンみたいな、しっかりしたやつ。
真っ赤で、目一杯に膨らませてある。
写真を見る限り悪寒は気にしてないというか気付いてない様子。

しかも、見る限りは実際にそこに存在しているとしか思えない、ハッキリ写り込んでいる。
むしろ、「腰にバルーンつけて山登りしてたんじゃね?変なの~アハハハ」で終わるような話。

しかし、悪寒は前述の通りそういう話は否定派だし、普段から俺に対してそんな嘘を言ったり茶化したりはまずしない。
もたろん本人にそんな風船を付けていたとか誰かにつけられたとかいう覚えも心当たりはない。
また、その山は本格的に山登りをする人じゃないととても登れない険しい山で、そんな場所でわざわざイタズラをするような状況でもないんだ。
山でもしそんなことしようものなら、したほうもされたほうも命に関わる。
まして山岳会のメンバーは皆真面目な中高年で、グルになって悪寒をからかおうなんてまずあり得ない。

結局、あくまで写真を鑑定wした俺としては、「悪寒の腰に風船が付いている写真」以外の結論を見いだせず、一体なんだったのか今でもわかっていない。
悪寒にも特に変わったことはなく、老いてなお相変わらず家族を心配させている。