HIRO1018037_TP_V

ある日夢を見た。場所は自分の部屋だった。
部屋を見渡してみるともう1人の自分が部屋の真ん中で正座をしてうつむいてる。
目はぼんやりとして揃えた膝の少し先一点を見つめてうなだれながら口をパクパクしている。

俺はもう1人の自分のおかしな様子が気になりそっと近づいてみた。
すると、口をパクパクさせているのだが微かに息がもれている。
もう1人の自分に耳だけを集中させてみるとその息はゆっくりと一定のリズムを繰り返していた。
更に耳を集中させると息がだんだんと声に聞こえて来た。
アー、アー、アー
アー、アー、アー
アー、アーアー

息は更に声になる。
アー、アー、アー
アー、アー、アー
アー、アー、アー

もう1人の俺はただただその奇妙なリズムを繰り返している
1度耳から集中をといてもう1人の俺の顔をまじまじと覗き込んだ。
息が声になって聞こえるようになったからか奇妙なリズムに合わせて肩と首が揺れ出していた。

その時、ふともう1人の気配を感じた。
覗き込んでいたもう1人の俺から離れて徐々に視界を広げるともう1人の俺の隣に女が正座していた。
その女の顔を見ようと恐る恐る視線を上げた。
・・・が、女の顔にはモザイクがかかっていた。
女であることは確かだがどうしても顔だけ見れない。
このよく分からない状況にただならぬ戸惑いが襲って来た。

そして女の横にいるもう1人の俺は気がつけばさっきよりもはっきりとした声であのリズムを繰り返すようになっていた。
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ

どんどんどんどん大きくなって行く声、首と肩の揺れ、息を吸う胸の動きが俺を焦らす。
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ

リズムがだんだん早くなって来る。
横の女はピクリとも動かないがどことなくさっきよりモザイクが取れかけて来ている気がする。
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ
・・・
「最後にアーッって言ったら、その時すべてが分かるよ」

!!
さっきまでとは違い目を見開いたもう1人の俺が突然放った言葉で、この先の嫌な展開に予想がついてしまった。
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ
気のせいじゃない。女の顔のモザイクがどんどん取れてく。
見たくない!見たくないが女から目を離すことができない。
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ
アーッ、アッアーッ

!!
「アー ー ー ー ー ー ーッ」
その瞬間女の顔のモザイクが取れて俺はとうとう女の顔をはっきり見てしまった。

そして夢から目がさめた。だか特に異変があったわけでもなかった。

それから数日後、仲間との飲み会から電車で帰宅しようとホームの椅子に腰掛けてぼーっと電車を待っていた。

時計を見るとそろそろ電車が来る時間だ。
線路の遠くから電車のライトが近づいてくる。
そろそろ椅子から立ち上がろうとしたその時・・・
遠くで電車の警笛が聞こえる。
ファーファーファー
ん・・・

当たり前だか電車が近づくにつれ汽笛が大きくなって来る。

ファー、ファーファー
ファー、ファーファー
ファー、ファーファー
え、これ・・・

そう思った瞬間、俺の目の前にOL風の女性が歩いて来て電車を待つようにホームに立った。
ファーッ!ファッファー!
ファーッ!ファッファー!
電車は煽るように汽笛を鳴らす。
ファーッ!ファッファー!
ファーッ!ファッファー!
汽笛が耳をつんざくくらいに聞こえたこの時、女はよろめきながら俺の方を振り返った。

ファー ー ー ー ー ー ー!!!!!!!
その瞬間、女はホームに落ちて行った。
俺は女の顔を見た。女も俺の顔を見ていた。
言うまでもなくその女の顔はあの日夢で見たモザイクの取れた時の女そのものだった。