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その日、自分は近くに住む友人と一緒にカブトムシを撮りに行った。
カブトムシを取るのは、本当は夜の街灯の下などが良いのだが、流石に幼い自分に夜間の外出は認められなかった。

なので、明け方。まだ薄暗いと言うより暗い中、友人と山に向かった。
ちなみに前に書いた橋を渡って行った場所にある山だ。
山に入り、上り坂になってから百メートルちょい。道は狭く舗装されていない山道だ。

一緒に行った友人は仲間内では一番年齢が高く(と言っても当時中学~高校くらい)信頼されていた。
その友人と一緒に道ばたの木を片っ端からカブトムシを求めて探して行く。
しかしカブトムシはいない。僅かに小さな雌が一匹いただけだ。

いつもならもっといるはずであるが、なぜか今日はいない。カブトだけでなく虫自体がいない。声がしないのだ。
街灯などあるはずもなく、二人の持つ懐中電灯だけが頼りなく暗闇を照らしている。
少ない収穫に自分はさらに上に行ったが書にある大木まで行こうと切り出した。

その場所にならいつもカブトムシがいるからだ。

普段なら調子良く頷く友人であったが、その時はなぜか威勢が良くない。
何が嫌なのかは知らないが、あまり乗り気ではない様である。
そんな友人を尻目に自分はずんずんと山道を登って行く。
脇にある木陰に獲物がいないかと手探りで草を掻き分けて木に近づいたその時。

木に近づいたその時、背後から光が照らされたのである。
一瞬友人が来て、ライトを照らしたのかと思った。だがそれにしてはおかしい。
ライトの光があたる面積は狭い。しかし今に光は自分の周囲数メートルをかなり明るく照らしたのである。

?と思いつつカブトを探す自分。だが、ここにもカブトムシはいなかった。
残念がり山道に戻ると、友人がすごい勢いで自分の元に駆けつけて来た。
不思議に思う間もなく。自分の腕を掴むと両手でガッチリと肩を捕まえられた。
訳が解らず友人に問い掛けるも、友人は何も言わない。ただ自分を押して山を下るだけだ。

辺りは僅かに明るくなっていた。と言ってもかなり薄暗かったが。

問い掛ける自分と無言の友人。
そろそろ視界が開けて遠くに橋らしき物が確認できる場所まで来た時、また背後から光が照らされた。
かなり広い範囲までぱっと明るく照らされたのだ。明らかに友人のライトではない。いやライトの光ですらない。
自分は背後を振り向こうとした。が、友人は自分の頭を掴み振り向かせてくらなかった。
さらに小走りで逃げるように押してくる。

橋の近くまで来た時に再び背後から光が差した。タイミングを計っていた自分は勢い良く振り向いた。
そこには、山の頂上に向かって落ちてゆく光があった。

当時の自分はそれが花火だと思ったらしく、なぜこんな明け方に花火をやっているのか不思議であった。
その後、家にたどり着いた友人に「今日山に行った事は絶対に秘密だ」と念を押された。