007horror0523_TP_V

友人のAとBから聞いた話を書きたいと思います。 

Aが大学に進学し、アパートで一人暮らしを始めて2年目の頃の話。 

近々雪も降りそうな初冬の深夜、Aは部屋に電気をつけたままコンビニへ行った。 

新刊雑誌を立読みし、飲み物を買って部屋に帰った途端、携帯電話が鳴り出した。 

時計を見ると、午前2時半。誰かと思い着信を見ると、友人のBだった。 

Bは、Aと高校で同じクラスで、お互いに本を貸し借りする仲だったが、進学先がAの学校から遠く離れた専門学校だったこともあり、疎遠になっていた。 

しかし、何故こんな時間に、久々に電話をかけてきたのか、Aは戸惑った。 

とにかく、久しぶりのBとの会話ということで、Aは電話に出た。 

「もしもし、Bか?なんでこんな時間に?」 

「Aか、お前今どこだ!まだコンビニか!?」 

いきなり、切迫した声でBが聞いてきた。 

「え、いきなり何だよ、コンビニって?ひょっとしてお前このへんに居るの?」 

「まだ外か?部屋に戻ってないのか?だったら絶対戻るな!」 

Aは唐突なBの命令に驚いた。すでに部屋に戻っているのでそれもできない。 

「いや、今もう部屋にいるけど…何、どうしたの」 

「もう部屋にいるのか…頼む、俺の言うこと信じて部屋から出てくれ!」 

Aが戸惑っていると、Bがさらに奇妙なことを言ってきた。 

「お前の部屋の奥に本棚あるだろ。何か変わってないか?本が2冊落ちてないか?」 

Bの言うとおり目を向けると、確かに2冊の本が本棚の近くに落ちている。 

Aは更に混乱した。進学後は会っていないBが、何故自分の部屋の中を知っているのか。 

「その落ちてる本って、○○の最新刊と、グレーの装丁のハードカバーじゃないか?」 

Bの言うとおりだった。本棚の方に行かなくても一目でわかった。
 
「やっぱりそうか、とにかく今すぐそこから出てくれ!」 

気味が悪くなったAは、コンビニに行った時の恰好のまま、電気も消さず外に出た。 

近所にはコンビニ以外開いてる店がないことと、アパートから離れたいこともあり、Aは歩きながらBと電話を続けた。 

「なあB、お前、俺の部屋に来たことなんてないよな?」
 
「お前の家の場所も知らない。でもお前の部屋に入った。訳わからんと思うけど」 

そういうとBは、さっき自分の身に起きたことを話し始めた。 

Bがいつものように寝ると、突然深夜の住宅街に立っているのに気付いた。 

まったく見たこともない街で、Bは驚きながらも、これは夢だと自覚できたそうだ。 

すると、眼の前の建物からAが出てきたのが見えた。 

BはAを久しぶりに見たことに嬉しくなり、声をかけたのが見向きもしない。 

そのまま近くのコンビニへ入るAを見て、「夢だからな」とBは不思議と納得した。 

Aが見えなくなると、Bは急に、Aは今どんな暮らしをしているのか気になった。 

今出てきた建物に住んでるんだよな、とBはそのアパートに入ってみた。 

一度も来たことのない場所なのに、BにはAの住む部屋がなんとなくわかった。 

3階の、通路の奥から3つ目の部屋。Bは鍵が掛かっているはずのドアを開けた。 

玄関に入ると、右に洗濯機、少し進んで左に風呂場。その奥には電気がついたままの部屋。 

部屋の中心には炬燵、左の壁際にベッド、そして右の壁際には本棚。何となくAらしい雰囲気の部屋だとBは思ったという。 

Aはそれを聞きぞっとした。部屋のある階や場所、内装までまったく同じだった。 

Bは本棚を見て、本を貸し借りしていたことが懐かしくなり、本を手に取ってみた。この漫画、最新刊出てたんだな。このグレーの本は小説かな?と、本をもう1冊取った時、急にBは強い気配を感じ、そちらを見た瞬間、本を落としてしまった。 

本棚の脇の白い壁から、女の顔だけがBを見ていた。 

長い髪を真ん中で分けた、額を出した整った顔立ちだったが、無表情で、肌の色が壁紙とまったく同じ白だった。Bには一瞬仮面に見えたという。 

「あなた、ここでなにをしているの」 

女の顔がBに問いかけてきた。Bは突然無性に恐ろしくなった。 

問いかけられた瞬間、これは夢じゃない、ここに自分が来てはいけなかったと感じた。 

無感情でそっけない口ぶりだったが、Bは聞いただけで死にたくなるほど後悔した。 

「あなたがここにいるのなら、わたしはあなたの―」 

壁の顔が何か言うのを見て、Bは咄嗟に、女の口を両手で塞いだ。 

自分でもよく分からないが、これ以上何か言わせたらやばいと直感で行動したという。 

ただ、強く押さえているのに、両手に伝わる感触が壁の物か人の物かよく分からない。 

女の方も、表情一つ変えずただBを見ているだけだった。