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K先輩から聞いた同僚Nさんの体験談です。

地名は伏せますが、金属製品製造工場で、18時過ぎにアルミニウムや金属を取り扱う工程で事故が起こり、工場3棟で火災と爆発を招いたものだったそうです。 

工場に設置してある火災報知電話によって通報され、消防隊と救急隊の到着時には、もう工場棟は殆ど原型を留めておらず、木造の柱、梁が露出していたそうです。 

「化学物質が貯蔵された工場では、無闇に放水出来ないのは知ってるか?」 

詳しくは理解してはいなかったが、取りあえずTVや映画で白い泡のようなものを撒き散らしているシーンを見た事があったのを思い出しました。 

それくらいの知識程度しか持ってなかったので、頷くだけにしておいたが。 

「そういう場合、飛び火した民家の消火から始める場合がある。 
 その間に危険物取り扱い施設の関係者から状況を確認し、消火方法を変える」 

間違った消火活動をして更に大爆発なんて事になったら恐ろしいのですが、幸いこの火災では起こらなかったようでした。 

「で、そこからどう怖い話に結びつくんですか?」 

「お前、これだけの火災被害なのに、死傷者が居ないとでも思ってんのか?」 

火災による小爆発の影響で近隣住民に数名軽傷、工場の従業員重度の火傷が数名、死者3名だったそうです。 

私は内心『少ない、原形を留めない程の火災なのに、もっと沢山死んでも・・・』と思いました。
消火活動は日付をまたいで行われたそうで、早朝より調査が開始され、Nさんはその調査官の中に一人として同行したらしいです。 

水がまだ滴る工場だったところに踏み入ると、ぴちゃぴちゃ足音が数人分と、マスコミのヘリと野次馬の雑音を無視して調査を開始。
 
感づいた事は忘れないようにボイスレコーダーで記録し、火災の原因を調査するために瓦礫をひっくり返すんだそうです。 

Nさんも天井の一部をひっくり返し、色々調査していると、黒い人型が床にクッキリとプリントされていたそうです。 

『嗚呼、此処で死んだのか。熱かったろうに』 

御遺体は既に検死官が発見して、解剖するために2体分と1本はお持ち帰りしたのだそうだ。 

また疑問に思った私は、また口を挟んでしまった。
 
「3人死んだと言ったのに、数が合わないじゃないですか。それに1本て何ですか?」 

「右肘」 

2人は焼死体として運ばれ、右肘の人は検死の結果で分かった事だが、爆発によって薬品を浴びたか吸い込んだために、身動きが取れなくなったとされている。 

そして炎に焼かれる前に瓦礫が右肘を切断・押し潰し、その他は粉々になったそうだ。 

Nさんが発見した黒い人型のプリントはまさに、その人が死んだ場所だった。

何か痕跡はないか、火災の痕跡はないかと調査していると、後ろを誰かが通り過ぎる気配がして振り向いた。 

しかし誰も居ないので、首を傾げてまた調査に戻る。 

至る所に粉が隙間に入って、黒くなった壁でキラキラ輝いていたそうだ。 

Nさんは壁にこびり付いた粉の写真を撮り、パケに採取して鞄に保管する作業を1週間、場所を変えて行った。 

上に報告する前にまず、調査官同士の報告会を行うのだが、結論は“粉塵爆発”による火災。 

室内に粉が舞っていた事、工場内の死角に粉が積もっていた事などが爆発の一要因であった。 

何しろ建物自体が原形を留めていない点と、この結論以外に可能性が無かったのである。 

後はリーダーが4日後の全体報告会にて説明するという段取りなので、 後日、数名の調査官を連れて現場を撮影する事となった。 

その晩にNさんは愛車のバンに乗って家に向かっていたそうだが、眠くなる時間でもないのに段々と瞼が下りてくる。 

『何処か、車、止める場所』 

近くにセブンがあったので、駐車場にて仮眠を取る事にしました。 
その時にNさんが見た夢が、私にとっては心弾ませるものだった。

Nさんはまだ焼け跡の工場で作業しているのか、調査官の作業着を着て立っていたそうだ。 

『あれ、まだ何か調べるんだっけ?』 

そう思い、自分の鞄の中に入っているであろう書類を確認しようとしたが、いつも足元に置く鞄がない。 

左右の足元に目を配らせても見当たらない。 

首をかしげて、鞄探しのために焼け跡になった床を歩き続ける。 

「すみませぇん!」 

声の方向を見ると、帽子を深く被り、工場の作業着を着た男性が此方に来ようとしていた。