KAZDSCF2676_TP_V

もしかして、火災事故があったと知らないでそのまま出勤してきたらこの有様で、動転してるのかと思ったらしい。 

そして、一般市民を事故現場に入れてはならないので、Nさんは注意しました。 

「駄目ですよ、此処は危ないから入って来ないで下さい!」 

Nさんは歩きながら、安全な場所まで連れて行こうと青年に近寄った。 

男性はなおも瓦礫を気にしながら近づいてきており、帽子も被っているので全く表情が認識できない。 

「すみません、すみません。でも、困ってるんです」 

「ええ分かりますよ、工場がこんなになってしまったんですから」 

「すみません、僕の身体って何処にありますか?」 

Nさんは男性の顔を見て仰天してしまった。 

というか顔があるべきところに存在しなくて、でもあるべき高さに帽子は乗っていた。 

まるで空気か透明人間が工場の作業着を着て、帽子を被り、靴を履いて流暢に話しかけているようだった。 

「ずっと探してるのに、ずっと探してるのに、何処にもない。来月までに終わらせないといけないのに、何処にもないんです」 

驚いてNさんは振り返って逃げようとしたら、後ろには真っ黒い人が2人立っていた。

途端に2人から人の髪の毛が燃えるような、たんぱく質が溶ける匂いがして、Nさんは足が止まってしまったのだそうだ。 

もうこれは、火災現場で死んだ3人だとNさんは思ったらしい。 

Nさんがこの状況をどう打開しようか思案していると、黒い人が強めの口調でNさんに突っかかってきた。 

「おい、○○の身体は何処にある」「これじゃ、仕事にならないだろ」 

Nさんは『彼らはまだ、自分が死んだことに気がついていないのか?』と思ったそうです。 

なので“自分の人生は終わってしまった”のだと、3人に事の有様を話しました。 

そしてNさんは黒い人型のプリントがしてある床を指差して、 
○○さんの身体は恐らく右肘以外が粉々になってしまったのだと伝えました。 

「私が貴方達に伝えられる事は、全て包み隠さずにお伝えしました」 

「じゃ、僕の右肘は何処にあるんですか?」 

「私は管轄が違いますから、分かりません。担当の者に聞いておきますので、明日私のところに来て下さい」 

「有難う御座います 必ず伺わせて頂きます」 

そう言って3人はNさんに背を向けて立ち去って行きました。

Nさんは車の中で飛び起き、セブンの明かりで少し平静を取り戻したそうです。 

Nさんはすぐに携帯で、例の右肘について確認の電話を入れました。 

電話向こうの人物は県内の法医学研究室を紹介し、Nさんはメールで地図と連絡先を送るように頼んだそうです。 

通話を終え、一先ずため息を零して、 冷たい缶珈琲と先生への菓子折りを購入して、その日は入念に身体を洗って、長風呂して寝たそうです。 

翌日一旦出勤してから、法医学研究室にアポを取る事に成功し、ホワイトボードに行き先を記入して出たそうだ。 

鞄を持って車を開けると、独特のあの匂いが充満していた。 

車に匂いが着くのを恐れて、窓を全開にして、 いざ出発って時にバックミラーを見ると、後ろに人影が2つと帽子が見えたらしい。
 
「早いですよ、まだ現地についてないのに」と独り言を零しながら、目的地で待っているであろう先生に“どう説明するのか”を考えていたそうです。 

確かに『幽霊が肘を捜していて、自分も協力しているんです』なんて、精神疾患を患っていると思われても仕方が無い。 

Nさんは『一応今後の資料として写真を撮りたい』という名目で通そうと腹に決めたらしい。 

そして先生に案内されるまま遺体安置所に移動中、後ろから1列で憑いて来ている。 

「さ、どうぞ。お仕事大変ですね」 

「有難う御座います。突然お邪魔して申し訳ありません」 

右肘の写真を数枚撮影して、先生にお礼の菓子折りを渡して、早々に退散する事にしたそうです。 

後ろを振り返ると、まだ3人は憑いて来ている。 

人通りのある通路で霊と会話なんて出来ない。Nさんは無視して帰ろうと背を向けたのだそうです。 

「色々親切にしてくれて、有難う御座いました」 

3人分聞こえて振り返ると、もう其処には居なかったそうです。 

Nさんはそのまま署の方に帰って、通常勤務に戻ったそうです。

以上でその火災事故でのNさんの体験談は終わりです。 

しかし私は”黒い人”関係の怪談を腐る程聞いてきましたから、別段新鮮味もありませんでした。 

ですので、私はK先輩にその感想を伝えたところ、思わぬ反論を貰いました。 

「お前、焼死体見た事ないだろ」 

「嗚呼~詳しく説明して下さい」 

私はこういうのが大好きです、ごめんなさい。 

K先輩が言うには、大きく4段階あり、 

Lv1=表皮1度の熱傷。Lv2=表皮(浅い)2度の熱傷&真皮(深い)2度の熱傷。 

Lv3=真皮3度の熱傷と皮下組織の熱傷。Lv4=4度の熱傷&炭化。 
というランクがあるそうです。 

よくTVや映画で看護士さんが「患者は○度の~」ってのが当てはまるらしいです。 

熱によって筋肉の組織が収縮し、硬直しながら、ぼろぼろと身体から炭化した皮膚や内臓が零れ落ちて、真っ黒な、でもひび割れたところから少し赤黒いものが覗いていたりするそうです。 

骨も火葬場のように綺麗な白色ではなく、黒ずんだもの赤いもの黄色いものがあり、たまに骨が水蒸気か何かで、竹が弾けるように吹き飛んだりするそうです。 

・・・とまぁ、そんな感じの焼死体さんが2人も背後に立たれたら、恐ろしいのでしょう。

これで、K先輩から聞いた話を終わりにします。