845 : 怪しいバイト3[sage] 投稿日:2009/07/13(月) 23:15:24 ID:fTrjVEJX0 [3/5回(PC)]

そこであらためて友人に


「何だよ」


と聞くと、友人は震えた声で


「あの部屋…ドアに外側から板で目張りされてたぞ…どうやって中に人が入るんだよ…」


俺は近眼なうえに暗かったため気付かなかったが、友人が言うにはどう考えても人が出入り 
できるような状況ではない形で板がドアに打ち付けられていたらしい。 

友人はかなり怯えていて、それは俺も同じだったのだが、不安を隠すように友人に 
こう言った


「きっと外側に入り口が別にあるんだよ、とりあえず確認しに行こうぜ」と。 


玄関を出て家の裏側に行く事にし、草をかき分けてその部屋のあるであろう場所まで 
行ったとき、俺の「別の入り口がある」という希望的観測は無意味だった事に気がついた。 

部屋には窓があったのだが、その窓にも外から板が打ち付けられており、他に出入り口 
らしきものもなく、どう考えても人が出入りできる状況にはなかった。 
しかし外からでもボソボソとその部屋から話し声がするのは解る。 

俺は何がなんだか解らず、頭の中で合理的な解釈をいくつも考えたのだが、どれも 
当てはまらない、どうしたらいいか解らず、暫らく2人で顔を見合わせていたのだが、 
このままでは埒があかないため、止せば良いのに板の隙間から懐中電灯を照らして 
中がどうなっているのか見てみる事にした。 

2人で懐中電灯を照らしつつ中を覗いてみると、そこは普通の和室で、隙間から見ている 
だけなのではっきりとは解らないが、どうやら真ん中にテーブルが置いてあるようだ。 
中に人がいるような気配は全く無い。 

何がなんだか解らない。 

声はいつの間にか聞こえなくなっていたが、さっきまで明らかに複数の人の話し声が 
中から聞こえていた。 
もう一度2人で懐中電灯を照らしながら中を覗き込むとある事に気がついた。 
テーブルの上に20cmくらいの箱が置いてある。 
 
846 : 怪しいバイト4[sage] 投稿日:2009/07/13(月) 23:16:36 ID:fTrjVEJX0 [4/5回(PC)]

箱を照らして見て俺達はゾッとした。 
その箱は自転車につかうチェーンロックらしきものや鎖のようなもので何重にも巻かれて 
いて、更に何個か南京錠まで付いていた。 
俺と友人は


「なんだよあれ、気持ちわりーな…」


と窓から少しはなれて話していると、突然 


バン! 


と内側から窓に何かがぶつかる音がした。 
びっくりして2人で窓の方を見たとき、俺達は叫び声をあげてその場から逃げ出した。 

何が起きたかというと、板が打ち付けられた窓の隙間から、4~5人の「眼」が俺達を 
板の隙間から見つめていた。 

性別や年齢は解らない、とにかく隙間から「眼」がいくつもこちらを見ていた。 
それだけしか解らない。 

家から200mか300mくらい離れた街灯のところまで走り、俺達が息を切らしてへたり込んで 
いると、叫び声を聞いたのか近所の人らしいお爺さんが


「こんな夜中になにをやってる!」 


と俺達に話しかけてきた。 
俺達は恐怖と息切れと動揺で


「窓に眼が…」


とか


「話し声が」


とか


「バイトで掃除に来て」 


とか支離滅裂な事を言っていたように思えるが、お爺さんはそれで何かを察したのか、 
急に口調が柔らかくなり


「とにかく家に来なさい、そこでゆっくり話を聞くから」


と素性も知らない俺達を家にあげてくれた。 

おじいさんの家に着くとおじいさんの奥さんらしいお婆さんもおきてきて、俺達に 
お茶を出してくれた。 

それで俺も友人もある程度落ち着き、バイトの依頼を受けて泊り込みであの家の片付けに 
来た事、夜中に変な声を聞いて調べに行った事、
厳重に板張りされた部屋を覗き込んだら 
沢山の眼に見つめられた事などを話すと、お爺さんは


「あの家は何十年も前に土地の権利関係で色々あったからな…
お金は諦めてお前達はバイトを断りなさい、今日は泊めてあげるから 
明日家に帰りなさい」


と言って来た。



847 : 怪しいバイト5[sage] 投稿日:2009/07/13(月) 23:19:03 ID:fTrjVEJX0 [5/5回(PC)]

お爺さんはあの家の事について何か知っているようだったが、それ以上は話してくれなかった。 
俺達は申し訳ないと思いながらも、その日はそのおじいさんの家に泊めてもらった。 

翌朝、朝飯までごちそうして貰った俺達は、お爺さんとお婆さんにひとしきりお礼を言って 
帰宅する事にした。 

最寄駅までの道中、俺がバイトを依頼してきたおっさんに電話して、金は要らないし 
交通費も返すからバイトは無かった事にしてくれと言うと、おっさんはしきりに事情を 
聞いてきた。 
隠す理由もないため昨夜あった話をすると、おっさんは独り言のように


「まだ出るのか…」 


というと、


「交通費はいい、でもバイト代は1日分も出せないからな」


「家の鍵は玄関マットの下に入れておいてくれ」


というと早々に電話を切ってしまった。 
口には出していなかったが、おっさんはかなり怯えていたのがわかった。 

帰り際、俺と友人は


「あの家で何があったのか」


それだけは気になった。 
そこで携帯で図書館の場所を調べ、当時の新聞記事などを探してみたのだが、それらしき 
事件などはみつからなかった。 

そこでふと思いつきで、今度は少し離れたところにある法務局へ行ってみた。 

法務局であの家の土地の登記簿を調べてみると、そこには


「1966年時効収得」


と書かれていた。 
それで俺はあの場所で何があったのか、ある程度解った気がした。 


終わり。