28 : シン ◆ooGG0MD9XE [hyakumonogatari@live.jp] 投稿日:2009/08/07(金) 21:23:59 ID:DFcX5TfL0 [2/26回(PC)]
「無題」 

2/1 

同僚のA氏から聞いた話。 

A氏が中学生になって初めての夏。その日 A氏は熱帯夜のせいで眠れずにいた。 
布団に入ったまま目をつむりぼんやりとしていたが、一向に眠気は来なかった。 
じっとりとした暑さと、窓の外から聞こえてくる、五月蠅いくらいの蛙の鳴き声のせいで益々目が冴えてきた。 
目を開けて時間を確認してみると、いつの間にか、二十二時を過ぎていた。 
まだ夏休み前だったため、明日も学校に行かねばならず、さっさと眠ってしまおうとA氏が再び目を閉じると、ふと耳に違和感があった。 
A氏は不思議に思い、耳に神経を集中すると、外から聞こえてくる蛙の鳴き声に混じって、別の音が聞こえてくることに気がついた。 

カー・・・ン    ・・・カーン 

幽かにだが、金属を叩くような音が断続的に響いてくる。 

カー・・・ン    ・・・カーン 

何の音か、どこから聞こえてくる音なのか、気になったA氏だったが、聞き取ろうにも音が蛙の鳴き声に負けているためろくに聞こえず、そのうち音も止んでしまったため何の音かはわからなかった。 
三日後の夜、音は再び聞こえてきたが、やはり蛙の鳴き声のほうが大きく、聞き取ろうとしたが結局何の音か分らなかった。 
それからしばらく音は聞こえなかった。そのうちA氏も音のことなど忘れてしまっていた。 
思い出したのはその年の冬、三度その音を聞いてからだった。 

十二月の半ば頃のある日の夜、A氏は次の日休みだったため、深夜までパソコンをいじっていた。 
もうすぐ午前0時になるかという時、突然、金属音が響いてきた。 

・・・カーン    ・・・カーン   ・・・カーン

 
29 : シン ◆ooGG0MD9XE [hyakumonogatari@live.jp] 投稿日:2009/08/07(金) 21:24:53 ID:DFcX5TfL0 [3/26回(PC)]
2/2 

夏場とは違い、別の音に邪魔されることがないため、音量は小さかったが金属音はよく聞こえた。 
A氏は音を聞いた瞬間に、夏に聞いたあの音だと気がついた。耳を澄ますと金属音が一定のリズムで聞こえてくる。 
一瞬、藁人形に釘を打ち込んでいるイメージが脳裏をよぎったが、釘よりもよく似た音に心当たりがあったため、思い出そうと一層耳に神経を集中した。 

・・・カーン    ・・・カーン   ・・・カン カン カン 

何度か聞いているうちにA氏はそれが何の音に似ているのか思い出した。町内の祭りの神輿の時に鳴らす鉦の音と、リズムも音もそっくりだった。 
しかし、祭りを行うのは春でしかも夜中。例え練習を行っているにしても変だった。A氏が不思議に思っていると音はいつの間にか聞こえなくなっていた。 

鉦の音はA氏が高校を卒業するまで、時々思い出したように聞こえてきた。 
音が何所から響いているのかA氏は気になったが、外に出て調べてみても、結局音が何所から聞こえてくるのかはわからなかった。 
高校卒業後は県外に引っ越してしまったため、音がどうなったのかは分らない。 
ある日、A氏がこのことを両親に話してみると、こんな返事が返ってきた。 
「神輿のとき鳴らす鉦の音は、神様が通ることを周りに教えるために鳴らすものなんだ。もしかしたら神様が町に降りてきてたのかもしれない」 
本当のところはどうか分らないが、もしかしたらとA氏は思っている。