874 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/05/19(水) 00:01:51 ID:+tknK7QW0 [3/3回(PC)]
その「手」は、掴んでいた窓枠を離し、にゅーっと虚空に伸び始めた。 
その手首には、タイの踊り子の様な金色の腕輪が付いている。 
肘が車外に出ても伸び続け、肩の手前位まで車外に出した。 

とんでもなでかさ。そして、やにわに 
自分が乗っている軽の天井を叩き始めたのだ。 
「ぼん、ぼん、ばん、ばーん、ばん、ばーん」という音が、 
すぐ後ろを走る俺等にも聞こえてくる。 

そのときの俺はというと、目の前で起こっている映像に脳の認識がついていかず、 
ただそのままぼーっと軽を追従していた。 
「停めて!!!」 
嫁の悲鳴交じりの声が、俺に急ブレーキをかけさせた。前輪が悲鳴を上げ、 
前のめりのGを受けながら、俺の車は急停止した。 

今まで眼前にあった、自分の車の天井を叩き続ける巨大な手を生やした軽は、ゆっくりと遠ざかっていき 
その先のカーブから見えなくなった。

 
875 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/05/19(水) 00:03:15 ID:UzhH9m/U0 [1/2回(PC)]
夕暮れに立ち尽くす俺の車。嫁は頭を抱え、小刻みに震えている様にも見える。 
俺も小便がちびりそうだったが、努めてなるべく明るく、嫁にまくしたてた。 

「なんだよ?お前いっつも笑って解説してたじゃん。あんなのいつも 
見てたんだろ?今回俺も見えたけど、すげえなあれは。」 

暫くの静寂のあと、嫁が口を開いた。 

「・・・・・あんなの、初めてだよ。・・・・アンタは、気付かなかったろうけど。」 
「なにがよ?」 
「あの腕。邪悪な感じがしない。かなり上位の存在だよ。」 
「・・・じゃあ良い霊とか、神様じゃね?運転手が悪い奴で、なんかそんなんじゃないの?」 
「そんな訳無い、絶対におかしい。あんな上位の存在が、あんな行動するわけがない。 
やっている事は悪霊そのもの。だけどあの腕は光に包まれてた。 
分からない。自分の無知が怖い。・・・怖い。頭がおかしくなりそう・・・」 

嫁の話を聞いていると俺も頭がおかしくなりそうだったので、わざわざUターンして 
その現場から離れ、実家には帰らずに居酒屋に直行、二人で浴びるほど酒を呑んで、 
近くのビジホで一泊した。、 

あの手は一体何だったのか、俺は未だに全く理解できない。 
ただ、あんな体験はこれっきりにしたいもんだ、と心底思った。