273 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/04(日) 02:06:01 ID:lpNh7whZ0 [1/14回(PC)]

"統合" 

それは不思議な話だった。 
とても平坦な文章で書かれていて 
一見、大したことがなさそうなのだが 
読めば筋が通っていて、引き込まれてしまう。 
ネットのとある場所で不定期に連載されていて 
そこでは、様々な人が創作や実話で怖い話を書いていく。 
その話は、そんな中の一つだった。 

おかんから呼び出された。 
依頼が入ったがIT系はおかんの専門外なので、俺に担当して貰いたいとのことだ。 
「まぁ大した話じゃないよ、ある書き込みの真意を探って欲しいらしいのよ。 
 何なら、M君のところに行って手伝ってもらってもいいよ」 
との御言葉を貰ったので、喜んでどうせ今日も暇であろう、師匠の古物屋に自転車を走らせる。 
「こんちゃーす。良かったー、この不景気で店がもうないんじゃないかと心配しましたよ」 
「うっせ叩き出すぞ。…まぁ上がれよ」 
居間に座っていた師匠は、クアッドコアの糞高いパソコンで何やら怪しげな論文を書いていた。 
台所で勝手にお茶を入れてから師匠に事情を話し、メモを渡して訊いてみる。 
「こういう書き込みなんですけど、どうでしょうかね」 
「前後の文脈次第だが、この書き込み自体は特に悪意も強くないし、 
 "お憑かれさま"のような、呪術的な引っ掛けも感じないな」 
早くも仕事が終わってしまったので、店先に雑多に並べられた陳列棚を見て回る。 
ホルマリン漬けの犬の首やら、何やら怪しげなハードカバーの古書など 
手に取るのを躊躇してしまうようなものが多い。 
探索にも飽きて、居間のテレビに繋いであったwiiで、マリカーをはじめようとした時だった。 
師匠が唐突に話し始める。

 
274 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/04(日) 02:06:47 ID:lpNh7whZ0 [2/14回(PC)]
「ネットって面白いよな」 
「いきなりどうしたんですか」 
「例えば、動画や字は細かい点の集まりで構成されていて、それらをそれっぽく見せているわけだ」 
「そうですよね、でも、それを言うならテレビもですけどね」 
「文章も大量に溢れているが、嘘も真もあるわけだ」 
「嘘を見抜けない人は~っていう、有名な格言もありますよね」 
「ところで怖い話ってさ、たぶん9割9分は見間違いか、作り話だよな」 
「そこまでかは分からないですけど、そんな感じですかね」 
「しかしそこまで読み手に見透かされているのに、なんでネット上に怖い話が尽きないと思う?」 
「ん~、読み手に想像させ易いからですかね。怖い話って自然と想像力が働くから、読み易いんですよね」 
「その通り。冴えてるじゃないか。ある程度ネタを揃えれば 
 稚拙な文章力でも、それなりに読ませることができるんだよ」 
「それを踏まえて、この話を呼んでみてくれないか?」 
サブのノートパソコンを手渡されて 
とあるまとめブログに転載された、シリーズものの怖い話を勧められた。 
師匠は論文作成に戻り、暇な俺は約2時間かけて50編ほどある、それを読み進めた。 
大体読み終わったころに師匠から尋ねられる。 
「どうだった?」 
「面白かったですね、初期のものから読んでいったんですが、 
 新しくなるほど、どんどん語りが上手くなって、内容も濃くなり、 
 怖さが倍々で増えていく感じでした。とは言え初期のものもネタは悪く無いです。 
 まるで、どこかで実際にあったことのような」 
「ああ、俺も同じ感想を持った。 
 それにしても、ネットで書く文章系のシリーズものって大変だよな。 
 普通の人間が書く場合は、どんなに面白い話を書いていても 
 段々ネタが尽きていって文章は先細り、次第に沢山の賞賛より、僅かな批判が鼻につくようになり 
 最終的には、十分な対価も貰ってないからやーめた。ってことになるわけだ」 
確かに、何年も更新されていないプロ並みに面白い話がいくつも思い浮かぶ。 
いや、まてよ、何でそんなに詳しいんだ?



275 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/04(日) 02:07:41 ID:lpNh7whZ0 [3/14回(PC)]
「もしかして、昔、書いてました?」 
"しまった"という顔をして師匠が言う。 
「…黙秘権を行使する。と、とにかく、短編の怖い話を書き捨てるより、 
 シリーズものは特に大変なんだよ。新作書くためには、辻褄も合わせないといけないし。 
 だがな、こいつは異常だ。よく見たら何年張り付いて書いてるんだ」 
確認すると、コピペされた最初期の書き込みの日付は、もう十年も前だ 
「さらに、さっきAが言っていたように、上手くなっているんだよ。 
 とてもゆっくりだが、確かに文体が進化しているわけだ。 
 十年前のものと現在のものを比べると、似ても似つかないほどに変わっている」 
言われてみれば初期のころの独特な文章の癖が、跡形も無いような平坦なものになっている。 
「でな、こいつも十年ほど連載していたら 
 他の作者が作ったシリーズものも同じサイトに、何本も掲載されているわけだ。 
 始まっては終わり~始まっては終わりが年に数回、十年単位では数十回は繰り返されただろう」 
「…さすがにもうバラすが、俺も暇つぶしで、こいつと同じサイトに書いてたことがあるんだよ。 
 ファンもそれなりについたが、頭のオカシイ煽りにボコボコにされて、1年くらいで止めた」 
バロスwwwwwと思ったが話の腰を折りたくは無かったので、笑いを噛み殺した。 
「クソ…今笑ったら話し止めるぞ…マジで…。あと叩き出す…場合によっては"アレ"に喰わせる。 
 …でな、その内容なんだが、殆どが作り話だったんだが"一割の真実"も混ぜておいた 
 少しでもリアリティがあったほうが、話が引き立つと思ったからだ」 
「かなり煽られてたのもあってそのサイトは、止めてからは見なくなったんだが 
 数年経ってあるまとめサイトで…まさに今、ノーパソで開いているここなわけだが、 
 自分の話が掲載されているのを知って、つい嬉しくなって色々と見てたら、 
 こいつの話もあるのを見つけたわけだ」 
「有名シリーズのようだし、載っていてもおかしくはないですよね」