353 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/06(火) 02:26:05 ID:kGGuzqam0 [5/6回(PC)]
1時間ほど走ると、町外れの雑木林に囲まれた、 
平屋の日本家屋に着いた。 
「ここなら大丈夫、あんたもゆっくり傷を癒すといい」 
また肩を貸してもらって、 
家の門を潜ると、スウッと何かが身体の中を 
通り抜けたような感覚に陥った。 
肩越しに見ると、おばさんは別に気にしていないようだ。 
そのまま歩いて行き、開いている玄関に入る。 

待機していた、助手らしき白装束と白頭巾の女性に誘導され、 
風呂場に入り、簡単に身体を拭いてもらってから、寝巻きに着替えさせられ 
奥の座敷で敷いてあった布団に寝かされる。 
寝ると、天井に結界が描かれているのが分かり、 
目で見回すと、四方の柱にも呪符が貼ってある様だ。 

おばさんが急須に水を入れながら話しかけてくる。 
「これから話すことは、寝ながら聞き流してもらって構わない。 
 実際、忘れてしまった方がいい話だからねぇ」 
まどろみながら、肯定の意を伝えようと、首を少し縦に動かす 
「私があんたを見つけた時、 
 すぐには近づかなかったろ、何でだと思う?」 
不明の意を伝えようと、首を少し横に動かす。 
「警戒してたんだよ。探索願いも確かに出されていたんだけど 
 同時にね、ある筋からの依頼があったんだよ。 
 危険だから、あんたを確保して引き渡せ、生死は問わないっていうね」 
ドラマみたいな話だが、おばさんの目は本気だ。 
「ただ、血塗れのあんたを見て思ったんだけど、引き渡すのは止めにするよ。 
 あんたはまだ子供だし、私も子供が居る身だ。一人くらい増えたって同じさ。 
 責任を持ってこれから私が、あんたを見守ることにする。 
 先方にもそういうことで、話をつける」 
何か言おうとしたのだが、そのまま深い眠りに引きずり込まれた。

 
354 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/06(火) 02:28:19 ID:kGGuzqam0 [6/6回(PC)]
あの日から一週間が過ぎた。真面目に養生している成果か、体力も回復してきて 
右肩から右手付近には若干痺れが出ているものの、 
足は普通に動くし、そろそろ外に出られそうだ。 
「身体がまだ十分に動かないのは、あんたの右肩の"アレ"のせいだよ。 
 私が切り取った分をあんたの体力で補っているんだろう。 
 他にやりようが無かったとは言え、すまないことしたねぇ」 
「いえ、自分の不肖ですから、ここに居させてくれるだけでありがたいです。 
 それより、この部分の設定が間違っているから繋がらないんですよ。 
 パスワード貰えますか、ほら、分かれば簡単です」 
おばさんが持ってきたノートパソコンの、無線LANのメールとネットの設定をしてあげる。 
「さすがだねぇ、マイコン関係のことは昔からとんと疎くてねぇ 
 今度うちの家のも、やってもらおうかしらね」 
「お兄ちゃん、でっかくて、しかも物知りだねぇ。師匠って呼んでいい?」 
おばさんが連れてきたらしい、小学校高学年くらいのガキが無邪気にそう言う。 
基本的にガキは、ホームレスの時に集団で石を投げつけられたり 
寝床に爆竹を投げ入れられたりと、色々あったので 
地球上から絶滅して欲しいぐらい嫌いだが 
命の恩人の息子なので、とりあえず殴るのは止めておいた。 

全快した後は、おばさんから定期的に封印を受けて"アレ"を抑えつつ 
バイトして生活費を稼ぎながら、大検を取って、 
次の年には、某大学の史学科に何とか滑り込むことが出来た。 
これでも元々は勉強家だったのだ。 
学費は、顔を一切見せない馬鹿息子の久しぶりの電話一本で 
どこまでも人のいい親が全額+α振り込んでくれたので、 
心配はいらないのがありがたい。 

これからは、俺の人生でも、珍しく波風が立たない今のうちに、 
興味のある考古学や民俗学でも勉強しながら、 
ついでに古物商の資格なんかを取ろうかと計画している。 
了。