493 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/19(月) 18:49:44 ID:dIgiHSiJ0 [23/26回(PC)]
何とか、何事もなくビルの前にたどり着く。 
車道に横付けにした車から出た先輩が叫んだ。 
「正面はロックされていて夜は開かないぞ!!どうすんだ!!」 
生霊が裏に回れというジェスチャーをするので、 
先輩とそっちに走る。 
裏口も鍵が閉まっていたので、ノブをガチャガチャ回していると 
生霊が壁抜けをして、中から裏口の鍵を回した。 
カチッとした音ともに鍵が開く。 
うぇwwwwそんなんありかww物体に干渉できる霊ってかなり強力なんですけどwww 
ほら、無理したからまた薄くなってる、とか思っている間もなく 
生霊が階段の上を指差す 
「先輩!!上がりましょう!!」「おう!!」 
一気に階段を駆け上がっていく、10階くらいまで上がっただろうか 
体力のある俺らも、さすがに息が切れてきたころに、 
屋上に繋がるドアが見えた。 
鍵を開けて、2人+1体で一斉に外に飛び出る。

 
494 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/19(月) 18:52:31 ID:dIgiHSiJ0 [24/26回(PC)]
見渡すと、屋上の端で 
スーツの女の子が脱いだ靴を揃えている所が見えた。 
明らかに飛び降り自殺しようとしている。 
今までの経緯的にたぶん、あの子が本体なのだろう。 
眼を凝らすと、本体の子は全身蒼白で生霊よりもかなり痩せていた。 
生命力を吸われるどころか楽しく生活して、少しも弱らない図太い先輩よりも 
どうやら本体が、生霊を出し続けていたことで一番ダメージを受けていたようだ。 
「おい!!」 
先輩が大きく呼びかけると、彼女はフラフラと揺れながら振り向いた。 
「あれ、Gさん…が見える、なんだ、また幻か…」 
「私なんか、生きていてもしょうがないんです」 
「ずっと真面目に生きてきました。だけど、今まで何もいいことが無かった。 
 これからだってきっと無いんです。もう死にます…最後にあなたに会えてよかった」 
何かブツブツと呟いて、 
そのまま、安全フェンスに手をかけてよじ登っていく、 
その時、俺の隣から先輩がいきなり消えた。いや、前方を見ると、 
とんでもない速さで、彼女の方に爆走していっている。 
テニス部なのに陸上部にスカウトされて掛け持ちしていた 
テニス部歴代最速の100メートル10秒4台の、高2の時より、 
もしかしたら速いかもしれない。 
そのまま助走をつけてフェンスに飛び移り、 
最上部に手をかけようとしていた彼女の細い身体に抱きついて、 
無理やりフェンスから引き剥がし、その身体を抱えたまま飛び降りた。 
着地に少し失敗してバランスを崩したが、彼女を守りつつ、軽く尻餅をついて座り込む。 
すぐに体勢を立て直した先輩は、彼女を抱き寄せて叫んだ。 
「俺が守る、守るから!!」 
「だから死ぬだなんて言わないで!!」 
うはww先輩wwwwwドラマみてえwwwすげー場面を見たww 
とまさかの先輩の"守る"宣言に顔を真っ赤にして噴出しそうな俺の横で、 
生霊は、ニコッとして本体に帰っていった。



495 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/19(月) 19:37:03 ID:dIgiHSiJ0 [25/26回(PC)]
生霊を統合して、頬に赤みがさしだした彼女を 
自宅まで送って行く際に、少しずつ事情を聞くと、 
G先輩は彼女から怨まれていたのではなく、慕われていたようだ。 
何故か痛車を運転させられている俺の後ろで 
先輩は「ごめんなさい」と繰り返す彼女を抱き寄せて 
「大丈夫、大丈夫」とずっとさすっていた。 

好きになったきっかけは、 
早朝出勤ラッシュの駅で貧血気味で倒れそうだった彼女を 
先輩がとっさに支えてあげたこと。 
先輩はさすがに社会人なので、普段は痛車で出勤はしないみたいだ。 
「気をつけなよ!!」 
白い歯を見せて爽やかに言い放ち、 
足早に去っていった皺一つない背広に、黒縁眼鏡のオールバックイケメンが 
同じ会社に居ると知って、気になってしょうがなくなったようだ。 
先輩はさすがに社会人なので、普段は見た目はまともみたいだ。 
彼女はこの年で初恋だったらしく。どうすればいいのか分からないうちに 
「私なんか…」と思いつめて生霊を放ち、 
体調を崩し、自宅でずっと寝ていたそうだ。 
最後のほうは、心身ともに弱り果てていて、正常な思考が出来なかったらしく、 
解雇された腹いせに、会社の屋上で自殺しようと思い立ち、 
社員にまぎれて会社に入り込み、社内に潜んで夜になるのを待ち 
夜になったので屋上で飛び降りる準備をしていた時、 
ちょうど、俺らが駆けつけたということらしい。



496 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/07/19(月) 19:38:38 ID:dIgiHSiJ0 [26/26回(PC)]
その後、独りで自宅療養していた彼女を心配した先輩が 
自作の夕飯を届けに行くという 
自然流れwwwで付き合いだした2人はとても上手く行き 
彼女は、先輩の痛車にもまったく臆することなく一緒に乗って、ドライブに出かけ、 
本人も腐女子的なところが多分にあるので、ヲタク趣味にも一定の理解を示してくれるらしい。 
そして先輩も理解者ができたためか、徐々にオフの時も行動が普通に変わりつつあるということを 
元テニス部の同級生から、最近聞いた。 

というか、話が上手く行き過ぎて、 
人助けしたはずなのに何だか釈然としないなぁ、なんて考えていると 
今回の報酬7万円が入った封筒が届いた。その中に 
"私たち結婚します"という、幸せそうな二人の写真がついた葉書が入っていて 
写真の後ろには、例の痛車もしっかりと写りこんでいる。 
御結婚おめでとうございます。先輩。 
 
了。