38 : 菊 ◆wNcSpqKeBg [] 投稿日:2010/08/20(金) 22:01:40 ID:o7f7I/ys0 [1/6回(PC)]
「最後の挨拶」 ※ちょっと良い話系なので、嫌いな方はご注意を。 

5年前の秋に亡くなった、祖父の葬式の時の話。 

線香の煙を絶やさぬよう、寝ずの番をした妹と私は 
朝食の後、お坊さんが読経に来るまでの時間、少し休むことにした。 
私が居間でぼんやりとしていると、部屋で寝ているはずの妹が 
携帯片手に激怒しながら居間へと下りてきた。 
「だれ?!私の携帯にいたずら電話したの!」 
睡眠を邪魔されたのが相当頭にきたらしい妹をなだめて 
よくよく話を聞いてみると、 
「ベットで横になっていたら携帯が鳴った。 
 寝入りばなを邪魔されてイラッとしたが出た。 
 それなのに相手は無言で切った。 
 着信番号をみたら家の番号だったから怒りにきた」 
と、いうことらしい。 
履歴を確認すると、確かに実家の番号が表示されていた。 
犯人は誰だと息巻く妹に、それまで静観していた父が声を掛けた。 
「そんな悪戯できる訳がないだろ。 俺が今まで住職と電話してたんだ。 
 お前たち、みんな見てただろう」 
確かに、父は妹が怒鳴り込んでくるずいぶん前から、お坊さんと 
電話で葬儀の打ち合わせをしていた。 
回線が一つしかない我が家で、そんな悪戯ができる訳がない。 
「お祖父さん、妹ちゃんにお別れ言いたかったんだねぇ 
 妹ちゃんのこと、本当に可愛がっていたもんね」 
伯母の一人がしみじみ言った。 

この祖父、毎年お盆になると、明け方に玄関の戸を開けて家に帰ってくるらしい。 
田舎とはいえ物騒なので、もう少し考えて欲しいと、実家の母がぼやいている。 
  
【完】