70 : 影虎 ◆OTL/VNUGLY [] 投稿日:2010/08/20(金) 22:29:08 ID:Ep1s25II0 [3/3回(PC)]
【祖母の話】 

御年80歳である。 
未だに畑を作り、車の運転にも問題の無いお婆さんだ。 
そんな祖母の、奉公先で昔あったお話。 

とても働き者の嫁さんがいた。そう裕福ではない家の娘だったが、望まれてその豪農へ嫁いだ。 
でも、どうしてもどうしても子供が出来なかった。 
そうこうしているうちに、その旦那が、嫁さんの妹に手を付けた。 

妹の方にはすぐに子が出来た。妹は言った。 
「あねさま許してけろ。おれは旦那の事好いてもいないが、くらしのためだ」と。 
妹は性根がだらしなく、働く事を嫌った。 
豪農の家の跡継ぎを産めば嫁としての地位は安泰、少なくとも食うには困らないと踏んだのだろう。 

あねさまである嫁さんは、その身ひとつで追い出される事になった。 
唯一の嫁入り道具だと言って、つましい暮らしの親が持たせてくれた大切な桐の箪笥も、 
妹がどうしても欲しいと騒いだので、そのまま妹の手に渡るはずだった。 

嫁さんは追い出される前の夜、首を吊った。 
桐の箪笥の、一番上の持ち手に紐をかけて、座り込むようにして。 
「いもうとがにくい はらのこもにくい」 
そう手紙があったそうだ。 

妹は新しい箪笥が欲しいと旦那にねだったが、買って貰えずにあねさまが死んだ箪笥をあてがわれた。 
腹の子が生まれ出る前に妹はおかしくなってしまった。 
最期には、「箪笥の中からあねさまが覗く」と言い続けて死んだそうだ。 

祖母はそこまで話して泣いた。 
首を吊った「あねさま」は、祖母の幼馴染だった。