79 : 月光蛾 ◆hack//tonE [] 投稿日:2010/08/20(金) 22:36:29 ID:sDNmc+bX0 [1/2回(PC)]
闇のむこうにいたモノ(1/2) 

少年時代に武蔵野(むさしの)と呼ばれる地域に住んでいました。 
当時うちは鸚哥(いんこ)を飼っていたのですが逃げちゃって、 
母(はは)や姉(あね)と一緒に泣きながら探してたわけです。 

小学校(しょうがっこう)の友達(ともだち)から、 
「蔵(くら)で綺麗(きれい)な鳥を見たぞ」という話を聞いて、 
ピーコちゃんだ!間違いないと感じ、蔵へ行くことにしました。 

材木屋(ざいもくや)さんの敷地内にあった蔵(くら)の前で 
俺(おれ)はちょっとかなりやばそうだなと思ったんですわ。 
なんか、とてつもない圧迫感(あっぱくかん)を感じたわけ。 

今考えればどう考えても不法侵入(ふほうしんにゅう)なんだが 
蔵(くら)の扉(とびら)に手(て)をかけたわけですが、 
鍵(かぎ)が閉(し)まってない状態(じょうたい)だったわけ。 

扉をあけるとかびくさい空気と異様な威圧感に圧倒された。 
何かがいる、鳥?確かに綺麗(きれい)な姿(すがた)だ。 
あそこにいるのはピーコでもなければシンペイちゃんでもない! 
でも何故(なぜ)か見なきゃという気持だけで前に進んだ。 

その直後に扉が閉じられた… 

皆さんは暗闇というものを味わったことないかもしれませんが、 
無駄に年経た俺だがあの恐怖に並ぶものは味わったことがない。 

人間って、本当の恐怖に遭遇すると動けなくなるみたいで、 
声も出ないし動けもしない、上下左右だってわからない。

 
80 : 月光蛾 ◆hack//tonE [] 投稿日:2010/08/20(金) 22:37:25 ID:sDNmc+bX0 [2/2回(PC)]
闇のむこうにいたモノ(2/2) 
したら、どっかから「こっちこい」って声がするわけ。 
俺なんかこっちもあっちもわからないし、体も動かない。 

また「こっちこい」という声が聞こえた刹那(せつな)、 
蔵の片隅が明るくなった。 

顔を上げるとそこには小学生の俺くらいの大きさの鳥がいるわけ。 
あなたは駝鳥(だちょう)ですか?と聞いたら、 
「お前は失礼な子供だな、私は孔雀(くじゃく)だ」と叱られた。 

その鳥(とり)が「私(わたし)を外に出せ」とか言い始める。 
僕も外に出られないんだから無理っすよみたいなこと言ったら、 
「足(あし)の鎖(くさり)を切(き)れ」とか命令するわけ。 

足に鎖なんかついてないじゃないかと言ったら 
「ああ、そうか、それならよかった」と言いながら 
俺に寄り添うようにそこにうずくまった。 

どれくらいの時間が経(た)ったかわからないが、 
眩(まぶ)しいの光がさしこんできた。 
一瞬目がきかなくなりとまどっている俺の傍(かたわ)らから 
鳥が飛び立った。 

扉を開けた婆さんは呆然とした俺には構いもせず、 
「ああ、孔雀が孔雀が逃げるー」と鳥を追いかけ走り去った。 

俺は結局叱られることもなく脱出に成功した。 
そして次の日ピーコが家に帰ってきたわけ。 
この前見に行ったが材木屋は今でも営業していた。