17 : お供えの希望聞きます。1/3 ◆BxZntdZHxQ [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 01:39:16 ID:K36XqKfnP [3/5回(p2.2ch.net)]
皆さん、今年のお盆はどのように過ごされたのでしょうか。 

俺の母方の本家は東京近郊で、母の姉が家を継いでいる。 
本家には伯母夫妻と、俺よりひとつ年下の従弟とその姉がいる。 
本家では冬に俺たちの祖母が亡くなったため、今年は新盆だった。 
こじんまりとだが、親族で盆の集まりを行った。 

盆には仏壇の戸を閉じて、その前に盆棚を設ける。 
ホオズキと枝豆を飾り、季節の果物や野菜を供える。麦藁の馬と牛、 
蓮の葉にミソハギ、仏花、線香とおりん、灯籠…そして位牌。 
俺が本家を訪ねた時には、 
盆棚の脇には親類縁者が持ち寄った花や供物が色々置かれていた。 
両親が先に着いていたので、俺は手ぶらでよかった。 
しかし一応、鞄からボンタン飴を取り出して供えた。祖母の好物だった。 

数日前、夢を見た。 
盆の集まりの席に祖母がいた。盛装でおしろいをはたいた顔に赤い口紅をして、 
出かける時はいつもしていた水晶のネックレスを着けて。 
周りで歓談する親類の中に混ざって、黙ってにこにこ話を聞いていた。 
目が覚めて、そう言えば通夜の日、斎場の売店で母が偶然ボンタン飴を見つけて 
買って来たことを思い出した。祖母のお棺に入れる為に。 
柔らかい飴がオブラートに包まれているお菓子で、俺もいとこの亜矢ちゃんやトモも、 
子供の頃にばあちゃんから貰って食べたことがある。 
俺は盆の集まりにそれを買って行くことに決めた。 

それにつけても供物の山はカオスだった。 
水ようかんとゼリー、有名洋菓子店の洒落た箱、ういろう、 
綺麗なあられの詰め合わせ、南部せんべい、紫芋の薄皮まんじゅうに 
レトルトカレーの箱詰め、そうめんとうどん、贈答用のジュースとビール、 
常温保存の安いあんみつとミックスフルーツ缶詰、そしてボンタン飴。

 
19 : お供えの希望聞きます。2/3 ◆BxZntdZHxQ [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 01:41:33 ID:K36XqKfnP [4/5回(p2.2ch.net)]
どうやら供物に始まって親類の土産、しまいにはお中元までここに置かれているらしい。 
しかしどう見ても自宅用の具のないあんみつと小さな缶詰は不思議な感じだった。 
弟分のトモに訪ねると、「それ姉貴」 と言う答えが返って来た。 

亜矢ねえの話は随分前にここでもしたことがあると思う。 
幽霊が出るとか、おかしなことがあるとか、 
そんな場所に行こうとしても見つけることが出来ない、辿り着くことが出来ないひとだ。 
だから、彼女にまつわる怖い心霊の話はない。 
でも、人に話をすると、それこそが彼女の霊感の強さの現れだと言われる。 
本当に霊感の強い人というのは、見たり遭ったりすることすらないのだと。 

トモによれば、あんみつは彼女自身の好物らしい。 
具がないのでミックスフルーツを投入して、すると今度は量が多いので、弟と半分こにする。 
食事制限のある祖母に悪いので、時々深夜に居間でテレビを見ながら二人で食べていたそうだ。 
祖母が亡くなって四十九日の少し前だったか、 
亜矢ねえはいつもひとつだけ買って来るあんみつと缶詰を二つづつ買って来た。 
一組は祖母の為だ。 
「昨日夢におばあちゃんが出て来てね、“亜矢ちゃん、あれ買って来てよ、 
いつも智ちゃんと食べてるやつ”って言うの。ああ、あれ食べたかったんだなぁ…と思って」 
それで、買って来たという。 
7年ほど前に祖父が亡くなった後も、亜矢ちゃんは夏の夕方、 
昼寝をしていた二階の自室から降りて来るなり、「ちょっとワンカップ買って来る」 と 
言ってコンビニに出かけて行った。 
トモが後でよく聞いてみると、「ドア開けて寝てたらね、 
お祖父ちゃんが生きてる時普通に上がって来たみたいに部屋の前まで来て、 
千円札出して言うの。“亜矢、ワンカップ買って来てくれ” って、普通に」 
やっぱり、それで買って来たという。 
思えばあれもお盆に近い日だったのだろう。 



20 : お供えの希望聞きます。3/3 ◆BxZntdZHxQ [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 01:44:17 ID:K36XqKfnP [5/5回(p2.2ch.net)]
亜矢ねえは幽霊は見ないが、夢でお遣いを頼まれる性質なのか。 
ある友人から、ご先祖様の夢のお遣いの話を聞いたことがあったが、 
それに比べると何ともシンプルで他愛ないお遣いだ。でもほのぼのしていて、 
なんだか祖父母に可愛がられていた彼女らしい話でもある。 

祖父の葬儀の直後、俺も祖父の夢を見ている。 
しかし祖父は懐かしそうに微笑んで俺の顔を見るだけで、やはり言葉はなかった。 
亡くなった人の方の都合なのか、俺のアンテナの問題なのか、 
それとも別の理由があるのかは判らない。 
家族以外にしてみれば些細なつまらないことかもしれないけれど、 
日常の小さな事象にも目を向けると、案外と不思議が転がっているのかもしれない。