535 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 23:41:19 ID:ch36mYis0 [1/5回(PC)]
流れをぶった切って申し訳ないが、俺の知ってる話を書いてみようと思う。 
実話なのであんまり怖くないかもしれない。 
名前は全部伏せるけど、多分地元の人間なら…というより、ググったらすぐにどこかわかるはず。 
ただ、迷惑がかかるとまずい場所にあるんで、名前を晒すのはやめてあげてほしい。 
長くなると思う。悪い。 



この話を聞いたのは、高校1年のとき、入学したばかりのころだった。 
日本史の担当をしていた先生が、この学校には曰くつきの場所があるんだよ、と教えてくれたんだ。 

「井戸があるんですよ、ほら、あそこ、茂みの向こう…ここは高いから、わかりにくいかな」 

先生は窓の外を指して、場所を教えてくれた。俺たちのいた教室は5階にあったから、確かに見えない。 
誰だったか、クラスメイトの一人が、あの駐車場のところ?って声を上げた。 

「そう、駐車場の横の、茂みの奥に。碑も立ってますよ」 

もう60歳ぐらいになるその先生は、授業を中断してまでその井戸の話をしてくれた。 
入学したてとはいえ、授業は面倒臭い。皆静かに聞いていた。

 
536 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 23:44:12 ID:ch36mYis0 [2/5回(PC)]
どうやら、俺たちの通うその学校は、ずっとずっと昔は城だったらしい。 
室町時代に造られた城で、中々堅牢な城だったという。非常に有名な某将軍と敵対して攻め滅ぼされたわけだが、激しい攻撃を受けても、長い間持ちこたえたそうだ。 
けれど、結局水と食料が尽きて、落城した。今だって田舎としかいえないところに建ってるわけだから、昔は本当に田んぼしかない場所だったはずだ。 
落城は当然のことといえばその通り。しかし、城内の人間は頑なだった。 

「身投げしたんです、あの井戸に」 

水が尽き、もうどうしようもなくなった城に火が放たれ、燃え盛る業火の中、武士は皆切腹。 
女性は全員、井戸に身を投げたらしい。それほど落城が悔しかったのか、あるいは、辱めを受けるであろう今後の人生を憂えたのか…。 
時代が時代とはいえ、凄惨な最期を遂げた城は灰塵となり、跡地には井戸だけが残ったという。 

それから時は流れ、奇妙な噂が立ち始めた。 
その井戸を覗き込むと、見えない何かに髪の毛を引っ張られるだとか、枯れているはずの井戸に顔が映るだとか、そうした目にあった人間は髪の毛が伸びる、だとか。 

「霧の深い日に、火の玉が浮かんでたなんて話もありますよ」 

どうやら、身投げをした人たちの怨念が今も残ったままらしい。 
まあどうせそんなオチだろうな、と思っていただけに、拍子抜けすらしなかった。 
きっと、クラスの皆だってそうだったと思う。 
その日は、そのままいつものように一日を終えた。



537 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 23:45:29 ID:ch36mYis0 [3/5回(PC)]
それからしばらく経った日のことだ。 
確か、三者懇だったかなんだったかで、半日で放課になる日だったと思う。 
そろそろ初夏を迎えるころ、最近暑いよなって話を友人三人としていた。そうしたら、ある一人の友人が、そうだ井戸行こう、井戸、と言いだした。 

「井戸ってあれ?先生が言ってた」 
「そうそう。今はもう慰霊碑も立ってるしさ、行ってみようよ」 

俺も、他の友人も、異論はなかった。俺たちはバスで通っていたから、スクールバスが学校へ来るまでは暇だったし、ちょうどいい時間潰しになると思ったからだ。 
慰霊碑が立ってるってことは供養もされているだろうし、こんな真昼間なら怖くない、って。 

SHRが終わってすぐ、俺たちは井戸へ向かった。 
教員・来客用の駐車場のすぐ横にある茂みの奥にあるのは、先生から聞いて知っていた。 
茂みと言ったってそんなに深くもなければ大きくもない。ともすれば、駐車場側から碑が見えるようなところだ。 
ちなみに、井戸の周りは、慰霊碑と井戸の曰くをつづった看板、そして井戸の名前を書いた碑が、それぞれ立っている。 
俺たちは、あっさり井戸へ辿りつくと、一人ずつ覗き込んでみた。 

「なんか見える?」 
「いや、何にも。お前も覗いてみろよ」 

そう言われて、俺も覗く。何も見えない。当たり前だ、枯れ井戸なんだから。 
けれど、その井戸を覗き込んだ瞬間、なんだか背筋がひんやりとした。 

(…なんか、気持ち悪い) 

俺の率直な感想はまさにそれだった。枯れている上、年月を重ねて積もった土のせいで、井戸というよりはただの穴だ。しかも、落ちたって登ってこれそうな深さだというのに、それでもなんだか気持ち悪い。 
すぐに覗きこむのをやめて、俺は「もう帰ろう」と言った。 

「拍子抜けした。ただの穴だな、あれ」 

きっと皆つまらなかったんだろう、確かに碑と看板がなければ、本当にただの穴だ。 
それに適当な相槌を打ちながら、俺たちは茂みの外へと出た。