538 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 23:46:42 ID:ch36mYis0 [4/5回(PC)]
「暑いな、今日」 

まだ5月なのに、もう真夏なんじゃないかってぐらい暑かった。 
茂みの外へ出た途端、汗が出るぐらい――いや、待て。おかしい。 
俺は、思わず井戸のある茂みを振り返った。井戸の名前が書かれた碑が、茂みから顔を覗かせている。 
そして、井戸はあの碑のすぐ後ろに、ある。 

「なんだよ、どうしたんだ」 
「…いや、別に」 

友人に呼ばれ、止めていた足を動かす間にも、太陽はじりじりと照りつけ、汗が出てきた。 
アスファルトのせいだろうか、遠くの方には薄い蜃気楼のようなものが見える。 
暑い、本当に暑い。 

でも、茂みの中は、とても涼しかったのだ。 

俺たちが歩き、汗を流している場所から数メートル程度の場所で、碑が見える程度に草や木の刈られた場所にあるのに、あそこはとても涼しかった。 
かといって風通しがいい場所では決してない。どちらかといえば、熱の籠もるような木々の生え方をしている場所だ。 
それに気付いた途端、先程感じた気持ち悪さが再び俺を襲った。 
なんとも言えない、怖いわけではない、どちらかというと悪寒に近い感じ。 

それから俺は、一度もあの井戸へ寄りつかなかった。

 
539 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 23:47:59 ID:ch36mYis0 [5/5回(PC)]
次の年、自殺者が出た。 
俺たちの通っていた三年制の高校じゃあなく、同じ敷地にある、中高一貫六年制の生徒だった。 
それが井戸と関係があるかと言われたら、今も昔もそういう風には思っていない。 
でも、別の校舎の人間とはいえ、同じ学園に通う人間が自殺したわけだ。家に帰り、その話を兄貴にしたら、ああ、って顔をされた。 
兄貴は、俺の通う学校のOBだ。 

「俺の時もあったよ。三人ぐらい死んだ。あの学校、しょっちゅう人死にでるから」 
「…自殺?」 
「そう、自殺」 

聞くところによると、わりと頻繁(といっても年に何人もってわけじゃあないが)に自殺者が出ているようだった。 
学校の近くに、自殺の名所があることも関係してるんじゃなかろうか、とのこと。 
この自殺の名所については割愛させてもらうが、それでもわりとよく聞く話だ。 
でもさ、と兄貴は言う。 

「皆、"曰くつきの井戸"ってのに気を取られて忘れてるんだろうけど、あの井戸で死んだのは女中ばっかりだ。どういうことかわかるか?」 

俺は、その時初めて気付いた。 
確かに、井戸に気を取られて忘れていたこと。 

「武士たちが、炎の中で切腹して死んでいったのはどこだと思う?…お前たちが生活してる敷地だよ」 

いいか、あの慰霊碑は井戸の慰霊碑だ。なあ、あそこ以外に慰霊碑なんてないだろ。 
それを聞いて、鳥肌が立った。 



今も、その高校はしっかり存在してる。 
自殺者と、あの土地の曰くが繋がっているかどうかはわからない。今の校舎は旧校舎を取り壊して作った新校舎で、すごく綺麗だから、井戸の話以外に怪談も聞かない。 

あんまり怖くなかったな。長くなった。ここまで読んでくれた人、ありがとう。 
そうだそうだ、もし井戸を見に行きたいって思っても、敷地内に勝手に入ると通報されちゃうから気をつけてくれよ。