97 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/09/19(日) 02:31:03 ID:ehyO8xHBP [1/19回(p2.2ch.net)]
ウチは都内で板金加工店を経営していた時があった。 
祖父の代なので、戦前からになる。 
戦後は屋根葺き職人(トントン屋)という仕事から、板金加工(ブリキ屋)に鞍替えしたのだ。 
都内の住宅事情から、建築関係の我が家の仕事は切れがなく、若い職人を地方から雇入れ、多い時は7~8人が居た。 
若い職人達の手取りは当時で2400円ほど。寝食には事欠かないが、それが弟子入りの厳しい世界だった。 

その職人達の間では、性質の良いのもいれば悪いのもいる。当然イジメを行う者も居る。 
二番弟子のMさんは、仕事は良くできるのだが、新人いびりと仕事を突然サボるので親方の祖父は困って居た。 
近所の風呂場を覗いて警官に捕まったり、仕事に行くフリしては麻雀を打ちに行く。 
そんなMさんを祖母は可愛がっていたようなのだが、ある時、Mのイジメが原因で若い職人が自殺した。 
鶯谷の駅で、飛び込んだのだ。 

この話は、今年の6月に他界した母が亡くなる半年前に母から聞いていた。 
この時母は死期が近づいており、隣に住むMさんは俺が仕事でいない時には母の様子をよく診てくれていた。 
しかしその話を40年来この家に生きてきて知らされてなかった俺には、一寸した驚きだった。 
「ウチから自殺者が出ていたなんてね」 
そう呟く俺に、母は「だからMちゃん、本当は嫌いなのよ」と言っていた。 

Mさんはさっきも書いた通り、まだ我が家に間借りして隣の棟に住んで居る。 
高齢だが、板金の仕事は来るし、仕事場もとうの昔に亡くなった我が家の祖父の仕事場を借りて使っているのだ。 

そんなMさんは、母の亡くなってひと月くらい後に、俺が尋ねようともしないこの隠された件をいきなり話し出した。 
鶯谷の駅で若い職人が自殺した時の事、その時、彼を可愛がる祖母も流石に堪忍袋が切れたんだろう。 
上野署からの連絡で、検屍に来てくれと言う呼び出しにMさんに行けと行ったのだそうだ。 

遺体は四つに切断されていた。 
母の霊前でポツリ、ポツリ、Mさんは妙に不安げに歪む顔で俺にその話を聞かせた。
 

98 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/09/19(日) 02:32:00 ID:ehyO8xHBP [2/19回(p2.2ch.net)]
話は変わるが、四年前から俺はスカイツリーの近くに仕事の現場が移り、そこで働いている。 
帰りはスクーターで帰るのだが、偶然の事か帰り道に鶯谷駅を見下ろす寛永寺坂を通っていた。 
最近、四十余年知らなかったその話を今になって聞かされた事と、自分の職場通勤との関係を、些か因縁があるのではと考え、 
帰り道に鶯谷を通る時は、必ず線路に手を手向けたり、花を手向けたりして居る。 
もし自分に近しい人のせいで、間違った死に方を選んだ人がいたのなら、間接的とは言え、個人に無関係とは言え、 
亡くなった人へのこうした配慮が必要なのかもしれないと思ったからだ。 
自死した相手がどこまで償いを求めているのかは推察しようがない。 
相手が満足し、自分らも安心して暮らせるのなら、こうした供養もお安い御用なのだが・・・。



100 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/09/19(日) 03:40:49 ID:ehyO8xHBP [3/19回(p2.2ch.net)]
だが、自ら命を絶つに至ったその職人の憤慨を今知る術はない。 
小さな供養を続けたところで、果して怒りや執念といった欲望を、その御霊が捨てされるかはわからない。 

この件、最も不思議なのは、なぜ母は死が近くなって忘れていたような事を話し出したのか、また俺と母が話をしていたのを 
知らないMさんまでもが、母の没後、何故自分からいきなり話し出したのか謎でならない。 
通勤途中で俺が通るのを感知した地縛霊の自死職人が、積年の恨みを晴らそうと俺についてきたのかもしれない。 

弱り目に祟り目というが、祟る霊というのは、家族の大黒柱がなくなり、家が脆弱になった頃を狙ってる気がする。