66 :  ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/10/15(金) 18:35:18 ID:6lnrYDLf0 [1/4回(PC)]
「どこだ、ここ」 
どこかで見た場所に俺は立っている。 
芒がさらさらと音を立てる。 
時間は夜だ。 
場所は、空き地? 
駐車場代わりに使われているのか、轍が走る一角がある。 
そこは黄土が見えているが、他は雑草と銀色の芒に覆われている。 
向こうに廃墟が見える。 
ここは・・・・・・ 
「よう、来たか」 
草の生えていない一角に、ドラム缶が置いてある。 
その中の何かに火が点いて、そばに座っている人の顔を照らす。 
「先輩」 
火を点けたのは先輩のようだった。 
手には百円ライターを握っている。 
「座れよ、お前も」 
先輩が腰掛けているのはベンチだった。 
こんな場所になんで?とは思ったが、素直に隣に座る。 
「なあ、ここに幽霊が出たら怖くないか」 
唐突に言う。 
それは場所を選ばず怖いと思うのだが、この人の場合普通に出てきても怖くないのだろう。 
「なんでです。何か曰くがあるとか?」 
風も無いのに炎が揺れる。 
先輩は喋らない。 
「何でですか?」 
重ねて聞くと、先輩がゆっくり口を開く。 
「例えば」

 
67 :  ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/10/15(金) 18:38:47 ID:6lnrYDLf0 [2/4回(PC)]
例えば。 
頭の中で復唱する。 
「幽霊だとかお化けだとか、そういうモノが怖いって奴がいたとする。そいつは見たことが無いから怖いのか、それとも見た上で恐れているのか」 
先輩は、見た上で怖くないと判じているのだろうか。 
「大半の人間はそれを恐れる。それは何故か。見たことも無いのに。それは何故か。答えは簡単だ。干渉できないからだ」 
「相手から干渉される事を恐れている。こちらからはどうやっても干渉できないのに、相手が害意を持っていたら。それは怖い」 
なるほどそうだ。 
対応できない敵意ほど恐ろしい物も無いように思える。 
「じゃあ、見えるし干渉も出来る上、その正体が人間と変わらないと知っている人間がソレを怖がるってことは、どういうことだ?」 
今度は俺が黙る。 
どういうことだ、とはどういうことだろう。 
恐らく先輩の事なのだろうが、先輩の世界は皆目検討もつかない。 
「人間と変わらない物が怖いってことは、即ち人間が怖いって事に他ならない。そいつは人間を恐れている。自分も人間なのに」 
炎が勢いを増した。 
「その中でも特に怖いのは、そいつが好意を持っている人間だ。嫌いな人間に何をされようがかまわない。それなりの対処をすることが出来るからだ」 
では。 
「好きな人間に殺されかけた時、その相手を殺して自らの命を守る事が出来るだろうか。そういう選択を迫られる。それは、嫌いな人間より遥かにやっかいだと言える」 
急に鼻につく匂いが漂ってくる。 
ドラム缶の中身が気になり始める。 
「けど、そんな事を思う人間はそいつ以外いなかった。そいつは探した。同じモノを見える人間を。理解してくれる人間を。見つかりそうになった時、それが起こった」 
それとはなんだろう。 
わからない。 
隣にいるのは本当に先輩だろうか。 
「それを解決する方法は一つしかないし、それが出来るのはそいつしかいなかった。そして、その被害者が、友達に成り得る存在だった」 
ドラム缶の中でじゅうじゅうと音がした。 
肉を焼く時の、油が爆ぜる音。 
「そう、友達だ。ずっと欲しかった友達。そいつは決心する。自己犠牲。そして、二度と会う事は無い」 
先輩は一旦話すのをやめた。 
芒が揺れて囁き声に似た音を立てた。