180 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/18(月) 03:20:30 ID:sSaupG2OO [1/6回(携帯)]
  
 睥睨 
  
霊感を持つ人間なら、祓ったりとまではいかなくても何らかの対抗手段を持っていることが多いと思う。 
宗教やら信仰に由来するものや、呪術・魔術的な儀式めいたもの、または自分の経験によるもの。 
お経や祝詞を読む、お守りを持ち歩く、人形代に吸わせる、その他。人によって様々だ。 
勿論、俺にもある。自分でも少々変わり種だと思う対抗手段が。 
だが、Aの対抗手段は俺のを鼻で笑えるくらい(事実鼻で笑われた)もっと変わり種だ。

 
181 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/18(月) 03:22:32 ID:sSaupG2OO [2/6回(携帯)]
高二の夏休み、二十歳になったということで、Aが酒と煙草を始めた頃の話だ。 
あいつはずぐに酒にも煙草にも慣れ、メンソってシャキーンてなるんだなあとか言ってた気がする。 
当時付き合っていた彼女が煙草嫌いだったため、喫煙者でありながら自分の家の中では煙草を吸わない事にしていた俺は、 
何の気兼ねもなく煙草が吸えるAの家に入り浸り、買い貯めた煙草のストックもA宅に置いているような有り様だった。 
その日も煙たいAの家でだらだらとしていて、どんな流れだったかは忘れたが、とにかくAの対抗手段の話になった。 
洒落怖から見てくれてる人はもう分かってるかもしれないが、そういう存在に対するAの対抗手段は、相手を睨むことだ。 
  
「昔さ、パラノイアだったんだよ。中学校に上がった辺りからなんかキモいのが見え始めた。 
 妄想ってか幻覚ってか、まあ、そんな感じのが。それで不登校になったわけ」 
中学校時代のAの話を聞いていた俺は、頷きながら煙草の封を開けた。 
定時制の高校に通うやつには、当然普通の高校に行かない理由がある。 
なんでこの高校に入ったのか? という定時制高校ではよくある身の上話として聞いていた。 
「人っぽいのとか、なんか悪魔っぽいのとかゾンビとか。今思うと霊も見てたんだろうなあ、区別つかなかったけどさ。 
 あ、妖精も見たぞ。ティンカーベルとか。つまり昔の私は妖精と戯れる無垢な少女だったわけだな」 
「今は煙草食らって酒を飲む汚れ女だけどな」 
「うるせえよ」



182 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/18(月) 03:24:12 ID:sSaupG2OO [3/6回(携帯)]
「で、どうしてそれがあの睨みになるんだ?」 
「あー、先ずは聞いとけ。とりあえず、そいつらは夢の中にも出てくるんだよ。まあ、悪夢だな。 
 妄想、幻覚の化け物が昼夜問わずで襲って来るんだ。あの時は頭が狂いそうだった」 
あ、つうか頭がおかしくなったからあんなのが見えたのか? なんて言いながら、Aはビールを飲む。 
この後彼女と会う予定が有った俺は羨ましく思いながらそれを眺め、煙草に火を点けた。 
「それで、ある時夢の中でこう思った。夢なら何でも出来る訳だから、こいつらを消すこともできんじゃないかって。 
 明晰夢ってやつだな。で、夢の中で必死こいて念じるんだ。死ね死ね死ねって。でも死んでくれない」 
俺は夢の中で生々しい化け物に囲まれるAを想像する。夢の中も現実も、中学生時代のAからすると大差なかったのだろう。 
そう考えて俺はゾッとした。たまに見る悪夢が現実で、こうしてだらだらしてるのが夢だと思うと、堪らない。 
「毎日毎日死ね死ねって念じて呟いてる内に、イメージもそれにくっつくようになった訳よ。 
 包丁刺されて死ぬとか、車に轢かれて死ぬとか思うと、その化け物が包丁で刺されて死ぬイメージが勝手に浮かぶんだ。 
 何回もそんなことをしてる内にそのイメージが固まってきた。化け物は私の妄想だろ。それを妄想の中で殺すんだ。 
 そうなると本当に死に始めたんだよ、化け物が。本当って言っても実際は私の妄想だか幻覚に過ぎないんだけどな。 
 その内夢だけじゃなく現実でもを殺せるようになってさ。まあ、妄想は妄想から逃げられないんだろうなあ」 
染々とAは語った。 
俺たち現実で生きている人間は、夢の中で死んでも実際には生きている。現実では死んでないのだから。 
だが、昔のAが見ていたという化け物は妄想の存在だ。妄想の中で殺されれば、生きてはいけないんだろう。