183 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/18(月) 03:25:09 ID:sSaupG2OO [4/6回(携帯)]
「その内、いつの間にか手当たり次第片っ端から化け物を殺すようになってさ。そしたら、だんだんと数が少なくなってきた」 
「それって」 
「うん。最終的には皆殺しにしたのかもしんないなあ。妄想を。でもさ、まだ変なのが見えるわけ。 
 いかにも化け物、ってのは居なくなったけど、まだ変なのがいるわけだ。まあ……お前にも見えるやつだな」 
妄想を皆殺しにしたら、残ったのは霊だったとAは言う。 
「霊だって気付いたのはそっからすぐ。いつの間にかそっちも見えるようになってたんだな。 
 で、やっぱりそいつらは殺せないんだ」 
「それはそうだろ。霊は妄想じゃないんだから、妄想の中で生きてるのを妄想の中で殺すのとは訳が違う」 
「うん。私もそう思った。だからオカルトに傾倒したわけよ。なんとかする手段は無いかってな。 
 熱中したね、あの時は。一通り勉強したあと、私がこれだと思ったのは、魔術だった」 
「魔術って、悪魔呼び出したりとか?」 
「いや、そういう儀式的なのじゃない。まあそんなんも出来るけど。成功したこと無いが。 
 まあ、魔術って言っても初歩の技術的なやつだ。私がやったのは幻視法と呼吸法」 
やっと話があの睨みに近くなってきた。そう感じた俺は煙を吐いて煙草を揉み消した。


184 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/18(月) 03:27:27 ID:sSaupG2OO [5/6回(携帯)]
ぼう、っとした焦点の合わない瞳でAは話を続ける。 
「幻視はイメージを視角化するってやつでな、それを使うんだよ。で、イメージを視角化するってことはつまりさ、」 
話の途中でAはビールの冠を傾ける。中身を全部飲みきったAは、っあー、なんて声を出した。 
「まあ、あれだよ。私が睨む時はさ、相手を見ながら頭ん中で相手を殺すんだ。死ね、死ね、死ねって本気で思いながら。 
 居なくなれ。消えろ。お前が存在してる意味はない。お前は無価値だ。死ね、死ね、死ね、死ね、死ねってさ」 
一人言のように言ったAは、いつものように焦点が合わないどこかぼうっとした目で俺を見た。 
淡々と語るAに怖気を覚え、俺は煙草に火を点けるふりをしてAから視線を外す。 
どこを見ているか解らないような目は、けれど、確実にこちら向いていた。 
……Aのそれは、きっと呪いみたいなものなんだろう。 
相手を睨み付け、死ね、死ねと本気で思いながら相手が死ぬ姿を丁寧に丁寧に想像して行く。 
丑の刻参りと同じように、相手に思念を飛ばして殺すという、呪い。 
「ゆっくり、ゆっくりイメージするんだ。相手を見ながら。ゆっくりゆっくり、注意して、丁寧に、丁寧に」 
淡々と話を再開したAは、まだこちらを見ていた。俺はAを見ることができない。 
「……なあ、ちょっと待ってくれ」 
見ることができないまま、俺はAに質問しようと口を挟む。 
「あの時のお前の自分霊のことか? 大丈夫だよ。軽く睨んだだけだから」 
俺が質問の内容を言う前にAはそう言って笑う。 
けれど、俺が知りたいのはそういうことじゃなかった。 
  
お前は俺を呪ったのか? お前は俺の死を願ったのか? 
お前の頭の中で、俺はお前に殺されたのか? 
  
俺は、何も言えなかった。



 185 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/18(月) 03:28:30 ID:sSaupG2OO [6/6回(携帯)]
生まれた会話の空白に気づかないふりをして、Aは声を挙げた。 
「よし! お前帰れ!」 
ふざけるように笑ったAに胸を撫で下ろし、俺は意識して普段通りの顔と声を作る。 
「何でだよ」 
「うるせえなあ。彼女に会うんだろ? 風呂入って服洗って、煙草の匂い落とさなきゃなんないだろ? 
 おら、帰れ帰れ」 
俺は意識して苦笑しながら舌打ちをする。 
「しょうがねえなあ。んじゃ、またな」 
そうして、その場はお開きとなった。 
  
  
……恐らくAは気付いていたんだと思う。 
俺が煙草に火を点けるふりをしてAから目を逸らしたことも、俺が本当に聞きたかったことも、俺がAに怯えていたことも。 
Aの睨みに関する話は、あれから数年経った今でも、話題に登ることは殆ど無い。