287 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/21(木) 01:55:08 ID:CUNHXRU60 [1/3回(PC)]
はじめまして。親戚との話です。 

約十年前のお盆のことだ。 
当時高校二年生だった俺はアパート経営をしている親戚のおっさんからアルバイトを頼まれた。 
日給五千円。どころか実質一時間程度で済むので時給五千円。 
アルバイトの内容もなんとも俺好み。 
いわく付物件を見てくるだけのちょろいバイトだ。 
勿論受けないわけがなかった。 

お盆明け。 
俺の遠い親戚且つ同じ高校の後輩と一緒にそのいわく付物件を訪れた。 
後輩を連れてきた理由はいたって単純だ。 
親戚の中でも特に見えるやつだったのでいわば保険だ。 
一階の右から二番目のドアの前に立つ。 
「おると思うか?」 
「入ってみなわからん」 
後輩は肩を竦める。 
何が出てくるか期待に胸躍らせながら玄関の鍵を開けた。 
入ってすぐに短く狭い廊下。左手に二つドアがありトイレと浴室のようだった。 
「奥やな。トイレも風呂も無視していい」 
もう見えてるんかいと内心後輩にツッコミを入れながら靴を脱ぎ廊下を抜けて正面のドアを開けた。 
8畳ほどのダイニング。 
奥の左手に和室、右手に洋室があった。 
ドアが開けっぱなしにされていたので、ダイニングから和室洋室両方の部屋の奥までが見通せた。

 
288 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/21(木) 01:56:14 ID:CUNHXRU60 [2/3回(PC)]
特に何も見えない。 
が、あちらからの視線は痛いほどに感じた。 
「見えてるか?」 
「バッチリ。もう帰ってええ?」 
帰ろうとする後輩を待たせて俺はダイニング、洋室を見てまわる。 
洋室の中を携帯電話のカメラで撮影していたら後輩から声がかかる。 
「おるんは和室や」 
見えない自分の目を呪いつつ和室に足を踏み入れる。 
見える限りは何もない。 
携帯電話のカメラで和室の中を撮影しまくった。 
十分くらいして後輩が帰ろう帰ろうと言うので俺が「お前怖いん?」と尋ねると 
「怖くはないけど気色悪い」 
そう言い、後輩も和室に入ってくる。 
おもむろにその場にしゃがむと畳に手を滑らせる。 
すくい上げると無数の長い黒髪が後輩の手に絡みついていた。 

その後は駅前の喫茶店まで後ろも振り返らずに逃げた。 
コーヒーを二杯注文して席についたところでやっと落ち着いて話ができた。 
「お前、何が見えてた?」 
「説明するのは簡単やで?でもまず携帯の画像確認してみ?」 
後輩は面倒くさいのかあまり話したくなさそうだった。 
言われた通りにひとまず携帯の画像を確認した。 
撮影したはずの和室の画像すべてに黒くて大きい影が映りこんでいた。 
後輩にも確認させると「そうやろうと思ってた」と彼は苦笑してコーヒーを口にした。 
「俺、何で見えへんかったんやろう」 
一応俺も小さい頃から幽霊というものが見えていた。 
だから後輩には見えて、自分には見えないことが当時としてはたいへんショックだった。



289 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/21(木) 01:57:10 ID:CUNHXRU60 [3/3回(PC)]
「気ぃ落とさんでええよ。兄ちゃんはちょっと近すぎただけや。 
 兄ちゃんは普通の幽霊と思い込んでたんやろうしな。 
 俺もダイニングに入るまではそう思うてたし」 
つまりは普通の幽霊ではなかったということだ。 
「兄ちゃんは二足歩行の幽霊を思い浮かべとったんやないんか?」 
「確かに。もしかして四つ足で歩いてたん?」 
「そこが間違うてる。幽霊が足あるとは限らない。 
 俺らの常識にあてはめたらあかん。 
 今回の幽霊さんはな、上におったんよ。上にな」 
後輩は人差し指を天井に向けた。天井を見上げる。 
もちろんそこには何もない。白い天井が広がっていた。 
「上からぶら下がってたっちゅうことか」 
「それも違うなー。髪の毛だけや。 
 天井から畳の上につくまで長い髪の毛が垂れ下がってとぐろ巻いてたんや。 
 兄ちゃんは運悪くその髪の毛の中におったから、そんな画像しか撮れんかったんやろうな」 
後輩は涼しい顔をしていたが、こっちはたまったもんじゃない。 
見えてるなら止めてほしかった。 
体中に髪の毛が絡みついている気がして一生懸命服を叩いていたら笑われた。 
「ちゃんと見たいんやったらもう一回行ってもええよ? 
 たぶんダイニングの方から集中して見れば見えると思うで」 
後輩からのありがたい申し出を俺は丁重にお断りした。 

終わりです