354 : 俺 ◆cLBpi8LhvQ [sage] 投稿日:2010/10/23(土) 01:36:39 ID:rZanC2L7O [6/12回(携帯)]
十円玉が動く。 
  
『み』 
『ん』 
『な』 
  
幼馴染みはBと十円玉に交互に視線を向ける。Bは左右に首を振る。 
私じゃない、のジェスチャー。 
十円玉は鏡の上に置かれた半紙の上を動き続ける。 
  
『す』 
『ぐ』 
『し』 
『ぬ』 
  
悲鳴が上がり、椅子が倒れた。 
Bは一人取り残される。 
十円玉に、人差し指を置いたまま。

 
355 : 俺 ◆cLBpi8LhvQ [sage] 投稿日:2010/10/23(土) 01:40:40 ID:rZanC2L7O [7/12回(携帯)]
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……そこまで聞いて、息を飲んでいた俺にBは軽く笑いかけた。 
「仕込みですよ」 
「ぁ?」 
間抜けな声が出てしまった、と思ったのを覚えている。 
「だから、仕込みなんです。その時十円玉を動かしてたのは私です」 
ふふふ、と笑ってBはスポーツドリンクを飲み干した。 
「……役者だなあ。語るのも上手い」 
「女は皆そうですよ。じゃなきゃ、女なんてやってられません」 
俺もBの幼馴染みもその信者も、彼女の演技に見事騙されたことになる。 
「それで、なんでまた」 
「いい加減、幼馴染みにそういうことをやめて欲しかったから、ですね。けれど直接言うなんてことはできない。 
 だからあんな事をしたんですよ。懲りてくれたら、ってね」 
成程なあ、と俺は頷いた。 
「男ばっかりの環境で育ちましたから、女友達なんて幼馴染み以外には居なかったんですよ。 
 空手もやってましたし、小学生の頃は男女とさんざからかわれて今でもトラウマですしね。 
 だから、幼稚園の頃から一緒にいてくれた幼馴染みが、尚更大切だったんです」 
俺からするとBは良い意味で男らしいさっぱりとした性格をしているが、まるで男みたいだ、なんて感じることは全くない。 
外見だって背は高いがファッションにも気を使っているし、化粧も上手い。 
黒い口紅と黒いマニキュアと黒いペディキュアを塗りたくり、アホみたいに鋲を打ち込んだ黒い革ジャンを愛用しているゴスパン女、 
Aに見習わせたいくらいの美人だ。 
でもそれは、男女とさんざんからかわれ続けた反動なのかもしれないなと考えた。 
「それで、幼馴染みは懲りてくれた?」 
「そうですね……話を続けますね」 
Bは話を続ける。 
俺は幾分リラックスして、その話に耳を傾けた。 

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358 : 俺 ◆cLBpi8LhvQ [sage] 投稿日:2010/10/23(土) 01:42:35 ID:rZanC2L7O [8/12回(携帯)]
三人が飛び出し、一人きりになった教室でBは嘆息した。上手くいった。これで幼馴染みが懲りてくれると良いんだが。 
そんなことを思いながら、もしかしたらこのことで幼馴染みの信者から怖がられるかもという考えが頭を過ぎる。 
「はあ」 
とBは深く嘆息したそうだ。これからの事を考えると憂鬱になる。視線は自然と下を向き、 
  
見てしまった。 
自分の指は、未だに十円玉から離れていない。 
  
Bは愕然とした。 
十円玉から指が離れていないことに気付かなかった。途端背筋が粟立つ。何か居る。誰かが居る。 
指は動かない。いや、感覚がない。 
それでも十円玉から指を離そうとした。やっぱり指は動かない。右肩から先が動かない。足も動いてはくれない。 
感覚が無い。自分の体じゃない。十円玉も動かない。けれどBは十円玉から目が離せなかった。十円玉が、今にも動き出しそうで。 
Bは思った。 
まさか、本当に、 
  
……こっくりさんに憑かれたのか? 
  
「こっくりさん、」 
言葉が漏れた。確認しないといけない。 
「……こっくりさんですか?」 
十円玉が動く。