439 : 1/5[sage] 投稿日:2010/10/25(月) 22:35:58 ID:FPmbdacs0 [5/10回(PC)]

『列車事故の夢』 


これも同じお婆さんから聞いた話です。 

ある日、お婆さんの家にお邪魔した時、何となくいつもよりご機嫌な感じがしました。 
二人暮らしだという50歳前後の娘さんがお茶を入れてくれた時も、 
お婆さんはお茶を入れている娘さんの方に歩いて言っては、娘さんと「いいからいいから」とか何とか話していたかと思うと。 
いったいどうやって持っているのか、お茶を乗せたお盆を器用に持って、ニコニコしながら私のもとまで運んでくれたのです。 
思わず手助けしようと立ち上がりかけましたが、その時も「いいからいいから」と言っていました。 

その晴れやかな様子にいつのまにか私も気分が優れ、何となく柔らかい感じでお婆さんに言いました。 
「お婆ちゃん、今日はなんだかご機嫌ですね! 何かいいことあったんですか?」 
するとお婆さんは「ん~?w」とまたニコニコしながら一度返事をし、それから言うのです。 
「昨日の夜はねぇ、嫌な夢を見なかったのっ」 
嫌な夢を見なかっただけでこんなご機嫌なんて、いつもどんな夢見てるんだ!? と思っていると、 
お婆さんの方から、まだ話したこと無かったわねぇ、と言いながら、いつも見る奇妙な夢の話を教えてくれました。

 
440 : 2/5[sage] 投稿日:2010/10/25(月) 22:37:18 ID:FPmbdacs0 [6/10回(PC)]
お婆さんは昔から、それはもう何十年も前から、ほぼ毎晩『列車事故の夢』を見るのだそう。 
それも決まって死亡事故であり、夢の中で事故に遭う人が実在する知り合いの時もあれば、知らない人の時もあるというのです。 
また何となく、いつも夢の中の自分は自分(そのお婆さん自身)ではないような気がするとも……。 
そして夢の中の「私」(=お婆さん)はいつもその瞬間をハッキリと目撃するのです。 

ある時は「私」が列車の先頭車両から前方を眺めていると、知り合いが線路上に立っていてそのまま轢かれてしまう夢。 
またある時は「私」は列車の外におり、目の前で知らない誰かが木端微塵になる夢。 

そのどれもがあまりにリアルであり、赤い血潮やぐちゃぐちゃの人体も、夢だと言うのにモロに描写されているというのです。 
そしてそれを何十年もの間、ほぼ毎日見ている……。 
……だからこういう、そんな夢を見なかった次の日は、いつも機嫌がいいの。 
そんなの中々無いことだから。 
お婆さんはそんな話を、とても穏やかに微笑みながら私に話すのです。 
「せっかくご機嫌良かったのに、変な話を聞き出そうとしてスミマセン……」 
畏まると、お婆さんは「むしろ聞いてくれる?」と言って私を見つめます。 
私はまぁ何だかんだ言って話の内容自体には非常に興味を持ったので、お婆さん問いに了承し、続きを聞きました。



442 : 3/5[sage] 投稿日:2010/10/25(月) 22:38:29 ID:FPmbdacs0 [7/10回(PC)]
それでね、と付け加えられた続き。 

「私」は夢の中で何人もの事故死した人々を見てきました。 
時には複数人が一度に轢かれて亡くなることもあったし、列車自体が脱線やらで、乗客のほうが犠牲になることもあったそうです。 
そして「私」は必ず、それらを助けることが出来ないのです。 
ホームに落ちた人に、現実の「私」には無い手を差し伸べたことも何度もあったそうですが、それでも列車の到達には間に合わず、 
そういった人々も皆あっと言う間に、「私」の目前で肉塊に変わって行った……。 
あまりに近くで見た時は、夢のはずがニオイまで感じることもあるというのです。 

お婆さんの話を聞きながら、私は適当なタイミングでお茶に手を伸ばしては、 
「いつもそんな夢を」とか「大変ですねぇ」とか、そんなような相槌を打っていたように思います。 
しかしお婆さんの話がまた一区切りついた時の「つらいですよねぇ」という私の相槌に、 
彼女は首を横に振ったのでした。 
「列車事故で誰かが轢かれて亡くなっても、所詮は夢の中の出来事なのよ。私が本当につらいのは」 

お婆さんの言うそれは『列車事故の夢』を見ない日と同じくらいに、あまり多く見ない、稀な夢。 
だけどそれは、『列車事故の夢』の一種で、『列車事故の夢』の別パターン……。 
お婆さんはその夢こそ本当につらく、本当に怖いのだそうです。
443 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/25(月) 22:38:58 ID:6mJcdFWW0 [7/18回(PC)]
もう、本当に言葉が出ない。さぁーっと体温が下がっていくのが分かる。手が汗でヌルヌルする。背中が冷や汗で気持ち悪い。 
 そういえば……北江公園って……この近く。そう──さっき数分前に前を通ったばかりの……。 
 待て、待て待て待て待て。さっきこいつなんて言った!? 

 今、あなたの方に向かって全速力で走ってるの──。