650 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/11/03(水) 21:54:18 ID:AtsuyNR5O [3/4回(携帯)]
「陰陽師なんかが使ってたってアレですよね」 
「そうだ。付け加えるなら、犬神やくだ狐なんかもそうだな。自分の……術力とでも言おうか、エネルギーを分け与え、手駒を生み出し使役する。つまり、女はそれだ」 
ん? 
使い魔というと、知能を持たない低級な連中を思っていたが。 
「人間霊でも式神に出来るんですか」 
先輩は首を振る。 
「まだ半分だ。というより、こっちの方が重要か。お前の見た女は、生き霊なんだよ」 
「つまり?」 
先輩は逆の肩を鳴らす。 
「お前の見た女は実在する。そいつがとにかく俺の所に行きたいって願った結果、エネルギーが俺の所へ来たわけ。式神のように」 
「じゃあ、知り合いなんですか」 
先輩はまた首を振る。 
「俺が行ってる病院で、二言三言話しただけ。あそこ精神科あるだろ。そこの患者」 
俺はぞくりとした。 
精神科にかかるような人間の、それも女の妄執は、想像出来ないほど恐ろしかった。 
ただ二言三言話しただけで、自分の魂を割って先輩の所へ飛ばしてしまう程に。 
「……やっぱり、害があるんですよね」 
先輩は疲れた様子だった。 
きっとその女は先輩の精神にも影響を及ぼしたりするのだろう。 
先輩は神妙な面持ちで言った。

 
651 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/11/03(水) 21:55:52 ID:AtsuyNR5O [4/4回(携帯)]
「いや、全く。見られてる気がしてちょっと寝不足なくらい」 
「あ、そーすか」 
予想外に軽い被害だったため、若干拍子抜けしてしまう。 
「まあ害意がなけりゃそんなもんだ。それもそろそろ終わりっぽいし」 
終わりっぽい? 
「なんでです?」 
先輩が笑う。 
嫌な笑顔だ。 
「お前、見えたんだろ」 
「はい、確かに」 
確かに、女は見た。 
「それがどうかしましたか?」 
「言ったろ、エネルギーだ。より強く存在するには、当然多くのエネルギーを使う。俺ならともかく、お前程度に見える程はっきり存在するってことは」 
あ。 
なるほど。 
「もしE線切っても飛ばしてたら、最後にはそりゃ……なあ?」 
はっはっはと笑って先輩は立ち上がる。 
「逃げ戻る先が無くなれば、俺なりのやり方で追っ払える。まあ、もう少しの辛抱だ」 
手をひらひらさせながら図書館を出る先輩の背中に、昨日の女が見えた気がした。 
彼女の体は、今どうなっているだろう。 
考えるのは、やめておいた。 

先輩と生き霊 終