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土方系ITに努める彼の事務所にある日、某所より依頼があった。 

「なんか極秘の依頼だとかで・・・・」 

正式な発注者名も告げられず、営業も通さず社長自身が窓口をやっていた。 
納入明けに社長が一席設ける程、非常に美味しい条件の依頼らしかったのだが、 

「カメラに映る人影を消す、それだけの仕事」 

幾つかのサンプル動画を与えられ、一定の条件を持つ人影を自動的に消す 
フィルターを作成する。そのフィルターをまた別のサンプル動画に適用し、効果を試す、という繰り返し。 
動画には煌々と照明に照らされた2車線の道路が映っており、両側は壁。 
どちらの車線も車はかなり飛ばして手前から画面奥へと消えていく。 
交通量は多くなく画面を虫がしばしば横切るので、山の中の高速道路の 
片側二車線のトンネルとしか考えられない。そこを人影が横切る。

「片足で着物姿の小学生ぐらいの子供が壁から壁へヒョコヒョコと横切る」 

そうだ。壁から壁、ってなんだよ、と聞くと、 

「壁からスッと出てきて反対側の壁にまたスッと消えるんだよ」 

特徴あるシルエットだったので人影の抽出や消去は容易だったそうだが、 

「変なんだよね。車が素通りするし」 

一部の車は明らかに人影を避けてハンドルを切って避けるのだが、 

「ほとんどの車は何も見えていないかのように轢いて行っちゃう。 
そいつは轢かれても車を通り抜けて何事も無かった様にヒョコヒョコ歩いているし」 

「轢かれる時と壁から出てくる時。全身が見えない時はどうしても輪郭がね・・・・」 

プレデター状態になってしまったそうな。発注元に社長を通して確認すると、 

「常時、一つの画面を注視していないからそれで結構。レスポンスと納期重視で」 

という回答。テレビでやっていた高速道路の管制室のマルチモニターの映像が彼の頭の中で浮かんだ。 

山中を走る高速道路 
そこは古えの魑魅魍魎の世界と最先端の科学が直に肌を接する異界。