435 : ハチロー[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 04:39:19.07 ID:j38Oqh2F0 [3/5回(PC)]
行きに通った航路にボートを戻して、全開で走りました。 
男がいた場所を通りすぎる時、ダチはじっとその辺りを見ていましたが、俺は、怖くて見れませんでしたよ。とにかく、全開で走り続けました。 
ボートを下ろした場所と自分の車が見えてきて、助かったと思いました。 
「なぁ、アレ、やばいヤツだよなー? まさか、ホントに人だったなんてことは無いよな。」 
「当たり前だろ、ペラが底につく浅さだぜ、人間じゃねぇよ。」 
「おー、でも、初めて見たぜ、ホンモン。」 
そんな軽口を、少しは叩けるくらいにまで、落ち着いてきました。 

少し冷静になって、気がつきました。朝より、少し減水してるようです。 
「ちょっと減水してっから、ボート上げるのキツイぞ。」 
「とっとと上げて、帰ろうぜ。」 
その日、トレーラーを使えそうな所が無くて、比較的段差の無い所から、ズリ降ろしたんですよ。 
ボートを岸に近づけて、急いで、装備を車に投げ込みました。 
その間、川の方は、なるべく見ないようにしてました。特に、男がいた辺りは、絶対に。 

軽くなったボートの先を岸に引っ張り上げて流されないようにして、さあ、後はタックルを積むだけ。 
ガシャ、ガシャ・・・ 
「あっ、チッキショー! ボックス(釣り道具箱)、ぶちまけたー!あれっ?・・・」 
「ナニ、やってんだよ、早く拾えよ!」 
「割れてる、こんなにでっかく・・・」 
「えっ・・・」 
ダチのプラノ(釣り道具箱)を見ました。  
取手と留具の部分に、何ヶ所もひびが入っていました。 
「・・・なんだ、こりゃ・・・」 
多分、俺もダチも同じことを考えていたと思います。 
でも、お互い口に出しませんでしたよ。 
何かが、始まったり、来たりするような気がして。

 
436 : ハチロー[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 04:41:22.12 ID:j38Oqh2F0 [4/5回(PC)]
2人とも、無言で散らばったルアーかき集めて、車に投げ入れました。 
いったい、俺たちが何をしたって? 
昼間、他にも釣りをしていたヤツはいたじゃないか。 
もしも、俺たちが何か間違えたのなら、勘弁してくれ。 
頼むから・・・・でも、駄目でした。 

ボートを上げようとして、車から、川の方に振り返ると俺のボートのすぐ脇に、あの男がいました。 
多分、俺が立ったら、ひざ位しかない水深の所です。 
胸の辺りまで水に浸かって、上流の、さっき、沈んでいった方に向いていました。 

俺とダチは凍り付いて、動けなかったです。 
男が、ゆっくりと斜め上に浮き上がりました。 
変な動き方でしたよ。 

次の瞬間、ポンって感じで、男が俺のボートに乗りました。 
足が途中で切れていて、何て言って言ったら良いか、木が生えているように、ボートにくっついてました。 

「もうー、ボートいらねぇや。」 
声が出ていたかは、分かりません。 
俺とダチは、車に飛び乗って、そこから逃げました。 

走って、走って、とりあえず、サンルーラルまで来て、駐車場にメチャクチャな停め方をして、レストランに入りました。 
ビールを頼んで、二人で顔を見合わせました。 
「もう、ボート無くなってもいいや。あそこには戻れねぇよ。」 
「あぁ、お前には悪いけど、俺も無理だ。」 
その夜は電気、テレビをつけっぱにして寝ましたよ。



437 : ハチロー[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 04:43:25.38 ID:j38Oqh2F0 [5/5回(PC)]
次の朝、やっぱりボートが惜しくなって、戻ってみました。 
ボートは、昨日の場所にちゃんと有りましたよ。 
昨日の夜、レストランからくすねた塩をボートにまきました。 
トレーラーに乗せて、宿の予定をキャンセルして、そのまま、帰りました。 
なんとなく、気持ちが悪いので、そのボートは売っちゃいましたよ。 
どこのショップかは言えませんけどね・・・。 


おわり