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ところは島根県西部。かれこれ十年前、当時自分は車であちこち走り回る仕事をしていて、
その関係上山間部を縫って移動することが多かった。 
その日も山あいの県道を走ってたんだが、携帯で本店に呼び出しを食らって戻らねばならなくなった。
本店はトラックの運転手さんが「山陰高速」と呼ぶ、これまた山あいの国道沿いにある。 
少し戻るか進むかすれば、何度か走ったことのある、国道に合流確実な道はあったが 
その日は自分の位置から類推して、「多分合流可能」と判断した未経験の細道を行くことにした。
選んだのは一応舗装はしてあるものの、普通車ならすれ違うのに躊躇するくらいの細い道。
ただ方角は間違いないのでとりあえず入ってみた。 
10分ほど走った頃から前方の風景が微妙に変化し始めた。道路の右側は下に崖、左手は山肌なんだが、右側の風景が妙に白っぽい。 
近づくにつれその理由がわかってきた。崖から伸びた杉や檜の枝に、軒並み幅1m、長さは数mの布がびっしり掛けられて風にはためいている。 
そうこうするうちに、今度は右側だけでなく左手の崖までが白い布で覆われているのが見えてきた。

「??何かの祭??」と首を捻ったんだが、その考えはすぐに「ヤバい、通行止めか侵入禁止の看板見落とした!!」に変わった。 
数十m先で、どうみても“バイオハザード”“細菌戦”“☆☆防疫部隊”とか脳裏に浮かぶような格好の人間が数人、
道路をほとんど塞いだ重機?の周りで立ち働いているような光景が見えたから。 
ギリギリ乗っていた軽自動車ならかわせるスペースが空いていたので、少し減速しつつ「こりゃ拘束されるか隔離されるか」とビクビクしながら進んで行ったんだが 
妙なことにその“防疫部隊”はゴーグル越しに訝しげな視線を送るだけで、制止するとか誰何をかけることはしなかった。

 距離にして100~200mくらいか、その“隔離区域”をとうとう抜けて、結局止められもせず 
本店に辿り着いた。頭の中は疑問だらけだったが、あるいは会社に迷惑をかけることになるかもと心配で、自分が見たことを話せない。 
少し考えているうち、あれだけ怪しい連中が「一切声もかけて来なかった」ことが逆に怖くなってきた。少なくとも公の機関か、公開しても構わない事柄に関わるのなら説明くらいしてくるだろうに…と不安にかられながら過ごしていた数日ののち 
テレビでこんなニュースが流れ始めた。 
『この白装束の集団は“パナウェーブ”を名乗っており、電磁波が人体に有害であるという説に従って 
電磁波の影響が少ないと思われる山間部でキャラバンと呼ばれる集団を形成し、特異な白布をその周囲に…』