N825_yamakagamihebi_TP_V

もうお爺さんになってしまった猟師の若い頃の昔の話。 

その日、彼はほとんど誰も立ち入らない「蛇山」という山に入った。 
周りにいくつか山があるが、その山は地元の部落の人も忌み嫌って入ろうと 
せず、草はぼうぼうで蛇はあちこちに出る不思議な山なのだ。 
なぜかその山だけ、昔から「二首の蛇を見た」とか「蛇がやたらでかい」とか 
「見たことも聞いたこともない毒ヘビがいる」だとかとかく噂があった。 
その噂の通りなのか、人が立ち入らないせいなのか、なるほど、やたらと 
蛇が多い。十歩歩けばガサガサッ!猟犬が歩いてもガサガサッ!と、 
ひなたぼっこ中の蛇たちがウジャウジャいた。おまけにみんなでかい。 
ほとんどの蛇が2mはあろうかという大きさ。小さいモノもいるが、 
尋常じゃなく蛇が多い。

そして、沢に出たとき、ちょっと一休み・・・と腰を下ろすと 
すぐ近くに石が積み重なっている場所がある。 
「あ~一昨年の大水で石が流されたのか・・・蛇の巣になってそうだな」 
とつぶやいたとき、その石の間からニョロニョロと蛇が一匹出て来た。 
どうやら予想通りに蛇の巣になっているようだ。 

そんなことはどうでもいい 

この蛇は何だ? 

その蛇は、熊のような丸い耳をもち、体が血のように赤い。 
特別でかいわけではないが1m少しはありそうだ。こんな蛇は今までに 
見たことも無ければ聞いたこともない。しかも動物みたいな耳があるなど 
もはや蛇としておかしい。もっとよく見れば蛇なのに手がある。 
小さくか細いが、明らかに手だ。手を振り上げ、尻尾を振って威嚇している。 
すると、猟犬が勝手に飛びかかった。しばらく絡み合った後、蛇は巣へ逃げて 
猟犬は脚を噛まれて泣いている。 

そこでハッとして、猟犬のケガを診てみると血が出ている。毒ヘビだったのかも 
しれない・・・。急いで犬を抱えると、村に向かって走った。しかし、自分が 
数歩歩いたところで、猟犬は四肢をピーンと伸ばして息絶えた。アレは毒ヘビだったのだ。 
直感でそうわかった。以来、その山には立ち入らず、その蛇の名を調べ続けたが 
ついに分かることはなかった。今でも図書館などにいっては暇なし調べているが 
未だに分からないのだった。