TSURU170321-163 mm-005_TP_V
奄美のとある海岸でビデオ撮影をした時の話。 
俺の家族、全員が思い出に残るようにって、ビデオカメラをスタンドに固定して撮るんだよ。 
で、兄弟とかで海で遊んでたんだよ。その時は奄美に住んでる叔父とか従弟達も一緒だった。 
まぁ、遊び疲れて、叔父の家に帰ってみんなでそのビデオを見たんだよ。

最初から身の毛がよだつ映像だった。 
映像の真ん中ぐらいだったかな。裸の女の人がぼんやり映ってたんだよ。 
髪が滅茶苦茶長くて、でも顔ははっきり表情まで見えた。 
ぼんやり映ってたのに表情まではっきり見えたって矛盾してるかもしれないけど、マジでそう見えた。 
心霊映像とかであるような睨んでるっていう表情じゃなくて笑ってたんだよ。 
しかも、楽しそうに。何が楽しいのかは分からないけど。

で、家族全員何かに憑りつかれたようにテレビに見入ってた。 
五分ぐらいしてからだったかな。その女の人が徐々にカメラに近付いてきてるって分かったのは。 
もう、全員顔が真っ青だった。 
でも、ある瞬間におかしな事に気付いた。 
その女の人の前を従弟が通り過ぎた。通り過ぎたはずなんだよ。なのに、女の人はビデオに映ったままだった。 
分かりにくいかもしれないけど、従弟が女の人の前を通り過ぎたら普通、従弟の影に隠れて女の人は見えなくなるだろ? 
それがなくて、女の人はずっと映り続けた。 
その時に少なくとも俺と叔父は気付いた。 
―ビデオに映ってるんじゃなくて、画面に映ってるんだ。つまり、そいつは俺達の背後に。 
叔父は思わず振り向いたんだろうな。 
叔父の悲鳴が聞こえて、俺達は一斉に散り散りに逃げた。 
テレビの横がリビングと廊下を繋ぐ扉になっていたのが助かった。後ろを振り向かずに済んだんだから。

外はもう暗かったが、叔父の家の前に全員飛び出した。 
みんな顔が真っ青だったが、叔父が一番顔色が悪かった。 
親父が叔父に「何がいたんだ?」って聞いても、震えて口を開こうとしない。 
結局、問い詰めても叔父は口を開かなかった。

今となってはアレが何だったかは分からない。 
あのビデオを再び見たが、女の人は映らなかったからだ。 
やはり俺達の背後にいたらしいんだな。 
でも、叔父の怯え方は女の人を見ただけとは思えなかった。 
何故なら、叔父はこれまでも幾度となく心霊体験を体験したらしく、そういうのには全く怖がらないのだ。 
その叔父が何故あそこまで怯えたのか、それも今となっては分からない。 
叔父はその四日後、風呂場で溺れて亡くなったからだ。 
そして一番の疑問は、どうやって女の人はテレビ画面に映ったか、だ。 
俺達は全員『テレビの前に』座ってた。つまり、女は俺達に遮られてテレビの画面に映ることが出来なかったんだよ。 

これは四年前に俺の身に起きた実話。 
俺は未だにあの女の楽しそうな笑みを忘れることが出来ない。