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昔、刀を持つことが今よりは規制が低かった頃。 
とある剣術家の妻に、鬼が懸想してしつこく言い寄ってきた。 

もちろん最初から鬼の姿をしてなかったから妻は断るんだけど、 
だんだん鬼が本性を現してきて、ついに家の中に押し入ってきた。 

家を破壊しない鬼が可愛いっちゃ可愛いんだけど、押し入られた側にとってみたら頭にくることには変わらない。 
家の人たちが押さえつけようとするんだけど鬼は強く、みんな壁や柱に叩きつけられ、大怪我を負わされる。 
主人である剣術家が本当に怒って、廊下で鬼を袈裟懸けに切るんだけどそれでもまだ襲ってくる。 

とうとう首を刎ねるんだけど、首だけになってもまだ浮かんで妻を探そうとする。
 
仕方がないので鬼の右目を貫いて、柱に縫い付けるんだけど、鬼はそれでも動こうとするんで血が止まらない。 
体の方も立ち上がろうとするので主人は脇差しで腹を掻っ捌き、心臓を抜いて、首の下に脇差しで縫い付ける。 
集まった近所や仲間に頼んで鬼の体を戸板に縛り、火山の火口に捨てに行って貰ったという話。

俺がこの話を聞いたのは小さいころだったんだが、 
古い屋敷の廊下にお面と干物が刀にぶっささっていて、 
不思議に思って見ていたらお爺さんが上の話をしてくれたんだよ。 

ところが俺がそのお屋敷にいた前後の記憶が一切無い。 

田舎の家でなし、田舎にそんなお屋敷は無い。 
ただそのお爺さんが 
「そのお面に触ってごらん、左目が動くよ」と言われて、 
怖くて手触れなかったことをはっきりと覚えている。