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小学校の3・4年生くらいのときだったと思う。 
当時もゲームはあったけど、まだまだ外で遊ぶ子どもが多かった時代。 
俺も学校から帰るなりランドセルを放り出して外に遊びに出た。 

だれかと約束してるわけじゃなくて、学校と家の中間地点にある公園に行くと、たいがいは何人か子どもが集まっていて、同学年のやつが多ければそいつらと遊ぶし、違う学年の子がパラパラといるような状況なら、上級生が何かみなでできる遊びを考えてくれたりもした。

夏頃のことだったと思うけど、その日は公園に行ってもだれもいなかった。 
しかたなく自転車を置いてブランコに乗っていると、男の子が一人来た。 
それは俺とは同じ学年だったけど違うクラスのやつで、家も近所ではなくどうにか顔を覚えてる程度。 
この公園でも前に見かけたことは一度もなかった。 
だから最初は話すこともなくて2人で並んでブランコをこいでいた。 
けどその日はいつまでたっても他の子どもがやってこない。 
するといきなりそいつが「面白いこと教えてやるよ」と言って、誘われて近くにある神社に行った。

神社はちょっと小高くなった住宅地の中にあり、その一帯だけ少し林になっていた。 
赤い鳥居がたくさん並んでいたからお稲荷さんだったんだと思う。 
小さいところで、ふだんは常駐している人もいなかったはずだ。 
そのときにも人の姿はなかった。 
自転車を平らな場所に置くと、そいつは鳥居のある石段の参道を通らず、ササの斜面を駆け上がって落ちていたペットボトルを拾った。 
何をするのかと見ていたら、そのまま境内の手水場に行って水道からペットボトルに水をくみ、 
「こっち、こっち」と言いながら右脇のほうから高くなっている社殿の床下にもぐり込んだ。

俺は神社に一人で来ること自体始めてだったし、当然お参りするものだと思ってたから、 
お賽銭はあげなかったし手も叩かなかったが、拝殿の前で形だけ手を合わせてからそいつの後に続いた。 
高床といっても床下はクモの巣だらけで高さは1mもなく小学生でも立ってはいられない。 
そいつは斜めから日が差し込んでいるところと暗いところの境目あたりにいて、 
下の地面にペットボトルの水をこぼしていた。 
「何すんの」と聞いたら「泥で人形を作るとちょっとの間生きてるんだよ」と言った。 
意味がわからないでいると「やってみせるよ」と水を注いだ上に土を集めてこね始めた。 
土といっても灰色がかってかなり細かかったが、すぐにねばりがでてきて人の形になっていった。 
かなり慣れているみたいだ。

もちろん人形といっても芯のないただの泥土だから手足を長くすれば折れてしまうし、ヒトデみたいなものなんだが、そいつは「さあできた」と言って人形を地面に置き、「こうしないとダメなんだ」と、外から松葉のようなのを拾ってきて顔の部分にぽち、ぽちと目の穴を開けた。 

するとその10cmばかりの泥人形が、 
バネでも入っているようにぐいんと上半身を起こして座った形になった。 
「えっ、嘘!」と思わず声を出してしまった。 
人形はそのまま立ち上がり、奇妙な踊りのような格好をするとそのまま前にぱたっと倒れて動かなくなった。 
「これだけなんだけどね。やってみれば」 
そう言ってペットボトルをよこしたんで、俺も土を湿らせてやってみた。

粘土よりもずっと粘りがなくてだ円形に数センチの手足の突起をつけるしかできなかったけど、こねている土がだんだん熱くなってきた感じがした。 
だいたい形ができると、そいつが「自分で目を入れなくちゃダメじゃないかな」と言って松葉をわたしてよこしたんで、さっきやってた通りに顔にあたる部分に2つ目を入れた。 
そのとき差し込んだ松葉からものすごく嫌な感じが伝わってきて手を離すと、下に落ちた人形がビョンと跳ね上がって真ん中あたりで前後に数回折れ曲がり、前のめりの形でぽっきりと折れた。