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そのとき、床下の神社の中央部分あたりから急に湿った風が吹いてきた。 
そっちを見たら暗い中に青白い光が二つ、何か生き物の目だと思った。 
急に心臓がドキドキしてしかも胸が痛くなってきた。 

ここにいてはいけない、という気が強くしたんで「ごめん、もう帰る」と叫んで床下から走り出た。 
そいつを一人残して石段を駆け下り自転車に乗って家まで帰った。 
息はきれていたが胸の痛みはなくなっていた。

その後学校ではそいつと顔を合わせる機会がずっとなかったし、公園でも見なかったんだけど、 
体育祭かなんかの臨時の実行委員会でいっしょになった。 
その帰りにそいつのほうから寄ってきて、 
「この間泥人形やっただろ、あれもっと長く動かせるようになった。にえが必要だったけどな」 
と早口で話しかけてきた。

「・・・にえって何?」と聞き返すと、 
「カエルとかフナとか、生き物の内蔵を土に練り込むんだ。 
 そうすると・・・長く生きてる。1分以上は踊ってる」 
「・・・どうしてそうやればいいってわかったの?」 
「お告げがあるんだよ。次はこうしろ、これをやれって」 
あまりに常軌を逸した話だったんで「嘘つくなよ」と言い返したいとこだったが、この間たしかに泥人形が動いたのを見ている。何だかわからないものの気配も感じた。 

それにこの話をしているそいつの目や息づかいから、子どもとは思えない冷たいものを感じて怖くなった。 

だから「もう一度、いっしょにやろう」という誘いに生返事をして、逃げるように別れて家に帰った。

ひと月くらいして、そいつは学校に来なくなった。 
他のクラスのやつの話では、授業の時間はバケツを持って山や川に出歩いているらしかった。 
学校の帰りに、釣り竿をもったそいつが自転車に乗ってるのを見たというやつが何人かいた。 
「にえを捕まえてるんだろうか」そう考えるとますます怖くなり、 
一度でもかかわったことを後悔した。 

それから10日くらいして、 
台風の接近のために学校が午前中で終わった日の午後、 
大雨の中であの神社の神木に落雷があった。 
近くの消防団が駆けつけたが、雨のせいか火事にはなっていなかった。 
薄暗い中で、消防団の一人が神社の床下から子どものような足が片方出ているのを見つけた。 

そいつが死んでいた。

ここからは子どもの噂なので、真偽のほどはわからない。 
むろん警察や目撃者、そいつの親なんかは状況を知ってるだろうけど、確かめたことはない。 
まあ漏れたとすればこの人たちからだから。 
そいつは雨ガッパを着ていたが、露出している手や顔の部分には直径5mmくらいの穴が数えきれないほどあいていたという。 
ただそれらは命にかかわるほどのものではなく、病死した後に小動物にやられたという結論になったらしい。 
床下はむっとする生臭さで、そこらじゅうに魚や蛇などの頭が落ちていた。 
そしてそいつが倒れていたところから神社の床下の中央部分に向かって、何百体、もしかしたら千をこえる数の泥人形が積み上げられていた。