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祖父の家に俺は六歳のころに引き取られた 
祖父には、けっして店舗スペースには入るなときつく言われていた。 
言いつけを大体守ってた気がするが 
10歳の頃、祖父にものすごく怒られた記憶がある。 
多分入ったんだろう。 

その祖父も俺が高校の頃に他界した。 
祖父の葬儀は随分にぎやかだった印象がある。 
遺言で葬式には顧客名簿にある人たちも呼んでくれとなっていたので 
印刷所にすってもらったものに数週間かけて宛名を書いて出したところ 
こういう風に言うのもちょっと失礼だけど 
一風変わった人達との出会いがあった。 

住職さんとかはかなり不機嫌だったけれども 
また会おうとか枕元に立ちに来いよとか 
お棺の中の祖父に囁きかける様子は 
今思うととても故人を大事にしているように思った。 

天涯孤独になった俺は財産はあったので 
お役所の人の仲介で面談した里親のもとへ引き取られた。 

幾度か実家に足を運んでにるうちに 
祖父の店の実態は骨董屋ではなく 
怪しげな由来を持つ品とかを中心に集めて 
オカルト系マニアに売っていたその筋の店だと分かった。

受験に失敗して近場のそこそこ名門にどこも失敗し 
滑り止めの大学に進学するようになると 
通学に便利なので実家に戻った。 
祖父の店の常連の幾人かとは連絡をとっていて 
店の再開を望んでるマニアも多いんだと聞かされていたので 
土日だけアルバイトを雇って営業を再開することにした。 

先代は面白い人ですね。 
そんな風にバイトのおじさんが言うので 
何故かと問うと 
付箋がいっぱいはられた日記志と書かれた大量のノートを読まされた。 
付箋をたどっていくと 
商品が入ったやら売れたやらといった事務的な内容から 
祖父の店内日記めいたものまでつづられていた。 
仕入れた商品をあの子と呼んで 
大層かわいがっていた様子だ 
今日も静かだと残念がるので思わず吹き出してしまった。 

俺にとっての祖父は常識的で厳めしい人だったので 
ミーハーなかんじのオカルトマニアの一面は本当に意外だった。 
それで興味を持って付箋のついてないところも読みたくなり。 
最初の一冊目からあらためて読み直した。 

日記を盗み見る罪悪感と店の歴史を垣間見る楽しさ 
夢中になっているある日にこの文章が目に入った。 
「あの子が天井裏に入った 
叫ぶ声を聞きつけて駆けつけたら手遅れだった」

ふと、あの子は今日も静かだという一文が頭をかすめた。 
皮膚から肉にしみいる寒さみたいなものを感じて眠れず 
徹夜でその先を読み進めていった。 
日付からすると当時11歳だったようだが 
10歳くらいのときに怒られた記憶とほぼ合致していた。 
それから一年近く祖父は夜中に大暴れしたりする俺や 
昼間のご近所からのクレームに悩まされていたみたいだ。 

やがて、決意表明のような文章にでくわした。 
「あの子を助けるためにもあれをどうにかしなくちゃいけない。 
先生のおっしゃった方法を試す」 

しばらくして最初のその書き込みがあった 
「ついに、本物らしい呪いの品を手に入れた。 
 先生は本当にすごい。 
 あの子はとても静かだ」 
「効き目が薄くなっている 
 先生がおっしゃっていたようにはやく増やさなくては」 
「また、なかなか良い時計を手に入れた。 
 振り子の向こうかガラスに映ったのか女の顔が見えた気がする。 
 あの子は大人しくしている」 

いくつか似たような書き込みを見て 
俺は頭から読み直すことにした。

最初のきっかけは小箱を手に入れたあたりだったようだ。 
その小箱を入手してから売れるまでの間に 
ちょくちょく人面を目撃したところから 
祖父はちょっとしたオカルトマニアになったらしい。 
が、あくまで仕事は骨董屋。 
いわくつきの品を好んでいても 
事が起こるまではオカルトショップではなかった。 

それを境に本業を疎かにして 
骨董商仲間から不気味な品の存在を聞きつけては 
糸目をつけずに買い取るということを続けていたようだった。 
飛ばし読みばかりしてきて見落としていた事実が見つかっていくうちに 
全身の毛が総毛立つことが多くなっていった。 

オカルトマニアにも能動的にコンタクトをとっていき 
徹底して危なそうな品を蒐集する姿勢が評価されて 
常連衆が形作られていったことなどがだんだん明らかになってきた。 
一人では怖いのに加えて、量が多すぎたので 
バイトのおじさんにも頼んで整理していくとやがてこうまとまった。 

俺に何かがあったために 
先生と呼ばれる誰かに相談して 
本格的なオカルトショップへ転向した後 
最後の方では店のリフォームをにおわせるなど 
何かから必死に俺を守ろうとしていた様子がうかがえた。